2025.09.26
深めるもちろん、当事者たちの中にもさまざまな違いがあります。
あたしの場合は、「男性」というマジョリティ性をたまたま持っている人間です。
なので、Beniさんが受けることになってしまった「強い支配」については、それを外部から被るリスクが低い状態で、これまで生きてこられたような気がしているのよね。
そうした「偶然恵まれていた」という側面があることを、あたしはこうした話題について触れるとき、自身の特権性としてきちんと認識しておかねばと、毎度思っているんだけれど。
そして、だからこそ、誰かが歩むことになった悲しい経験について、気軽に「わかる」とは言うべきではないとも思っているんだけれど。
それでもお手紙に書いてあった、「自責の念や罪悪感」「屈辱感」を抱きながら、「ガラガラと崩れた自分を必死に組み立て直しては突き崩される、というループ」にハマってしまい苦しむというのは、自身の経験として似たような事態にしっかり心当たりがあります(昔、絶対にゲイだと確信しているのに、「バイセクシャルかも」という語りで、いろんなことを誤魔化そうとした時期が。あの時は混乱していたし、辛かった記憶があります)。
最近「自分は小さいころからすんなりゲイとして生きてきた。困るとか迷うとか別にない」と語る、若き当事者インフルエンサーも出てくるようになりました。
それ自体は、喜ばしいことなのかもなと思います。
当事者にとって混乱なく生きる道が、広く開かれてきている証拠なのかもなと、考えることがあったりもします。
ですが、Beniさんのように。
セクシュアリティという点から、望まぬ迷いや乱れがおのれのうちに巻き起こり、アイデンティティや尊厳を損なってきたLGBTQたちは、これまで事実存在してきたし、ときにその存在自体を脅かされてきました。
カミングアウトすることに、リスクすら未だ伴う社会です。
そこからもわかるように、性的マイノリティは「自分の世界をかき回される」だけでなく、その世界があること、この世界に居ることそのものをかき消されてきがちだったのです。
だからこそ。Beniさん。
何度でも言うけれど、あなたがサバイブしてきてくれて、本当によかった。
同じくセクシュアリティに混乱を抱えたことのある身として、あたしは本気でそう思っています。
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