2025.09.18
出かけるシリアスなテーマなのに、笑いたっぷりでテンポよく見せる演出も魅力です。
たとえば天界の分岐点で現れる、赤・青・黄の3人組。
息ぴったりの演技で、コミカルな世界観を作り出します。この3人組も、かわいらしくて、愛らしい…。
幼馴染5人も、仲良しっぷりが目に見えて伝わります。
天界ならではの演出で、日常生活ではあまりしない動きもあるのですが、5人の息がぴったりそろった演技が見ていて楽しい!
ただ、私が見学した通し稽古は、舞台セットや照明など、全体の演出はできあがっていない段階です。舞台は音響や照明、衣装、大道具小道具など、たくさんのスタッフワークが組み合わさってできあがるもの。
通し稽古の段階でも見ていて飽きない作品だったので、本番はさらに何倍も魅力的な舞台になるのだろうと、期待が高まりました。
この舞台に出るキャストは、7月から開かれていた演劇ワークショップの参加者の中から、オーディションで選ばれました。
すでに舞台で活躍している俳優から、演劇未経験という人もいます。
「これからの札幌の演劇シーンを支える人材を育成する」ためのワークショップ。
参加者それぞれの魅力が光ります。
たとえば本庄一登さん。初回のワークショップで、すれ違って「こんにちは」という一つの場面を全員が演じた中で、一人だけ大きな笑いを獲得して、注目を集めていました。
オーディションでは幼馴染5人のうちの1人、バク役に抜擢されました。
全6回の公演、フルで出演する人もいますが、同じ役をステージごとに別の人が演じる「ダブルキャスト」「トリプルキャスト」もあります。そこも魅力のひとつです。
幼馴染5人のうちの1人・ケンは、神成悠平さんと、向山風汰さんのダブルキャストです。
向山さんは、ダブルキャストで演じることについて、「シングルキャストであれば、自分の稽古の映像を見て、きのうの自分と比較して次を考えたりしますが、ダブルキャストだとほかの人の演技を見て、また客観的に考えられるなと感じています。客席から見ていて、ここはこんなふうに動くといいんだと気づいたり、動きや間の取り方を『おもしろかったから自分も取り入れよう』と思うこともあれば、『おもしろかったけど、自分は同じように再現するのではなく、こういうアプローチをしてみよう』など思うこともある」と話します。
実は、エンケン会長のHBC堰八紗也佳(せきはち・さやか)アナウンサーも、「表現の幅を広げたい」とワークショップに自発的に参加していました。オーディションに合格し、天界の使者ルカとして舞台に立つことが決まっています。
ダブルキャストで、フリーの俳優・五十嵐みのりさんも同じ役を演じるのですが、それぞれに違った演出がついている場面もあります。アナウンサーだからこその演出がある…とだけ聞いていましたが、通し稽古を見て、どの場面かすぐにわかりました。
堰八アナはワークショップを通して感じたことを、Sitakkeで体験レポとして執筆していますが、その中で、「アナウンサー17年目の私にとって、唯一の武器を奪われたかのような衝撃」を受ける瞬間もあったと語っていました。
しかし、アナウンサーだからこそぶつかる壁もあれば、アナウンサーだからこそできることもある…講師の納谷真大(なや・まさとも)さんが、堰八アナを生かすための演出をつけてくれたのです。
稽古中、演じる人が入れ替わるたびに、それぞれの味を生かした演出で個性が生き、さらに相乗効果が生まれ、舞台がよりおもしろくなっていくのを感じました。
出演シーンが限られるカップルや使者も、個性が色濃く、強く印象に残ります。
最初は誰がどの役を勝ち取るのか、ライバルでもあったはずのキャストが、オーディションを経て、本番が迫る今はチームでいいものを作ろうと、話し合いながら稽古をしていました。
キャストが変わる回を複数回観劇して、それぞれのおもしろさを見比べるのもおすすめです!
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