右半身に麻痺を抱えながらも左手でフルートを演奏する畠中秀幸(はたけなか・ひでゆき)さん56歳。
病気によって生まれた異なる2つの感覚を受け入れ、音楽と農業が対話する新たな空間をつくろうとしています。
畠中さんはいま最も忙しく、最も演奏依頼がきているフルート奏者のひとりかもしれません。
この日は、能楽師の津村禮次郎さんと共演です。
これまで築地本願寺や沖縄の戦争遺跡など、全国各地で演奏してきた畠中さんにはもう1つの顔があります。
「農業をやりながらアート活動をしよう、めっちゃ面白そうでしょ」
到着したのは、長沼町の農業で使われるD型倉庫。
建築家としての新たな活動場所です。
「ここにも野菜を貯蔵するんですが、一般の人にも開放して音楽を聞かせた作物を売ったりするスペースと、ステージにして演奏会ができるような形にする」
目指すのは、音楽と農業をかけ合わせた「アートヴィレッジ」という施設。
暗く、農器具が並んでいた倉庫は、サビや土を生かしながらも、木のあたたかい香りが広がる空間へ。
「演奏会のときにパタンと開くと音が抜けると回る。塞ぐと音が止まる」
大きな観客席が並び、トタンがむき出しだった壁は、音が反響しやすい材料を施し、音楽ホールとなりました。
「壊して新しいものを建てるのはいいのかもしれないが、いい空間があったら使わせてもらう」
建築と音楽。
音楽と農業。
異なる2つのモノを繋ぐ活動のきっかけは、14年前に畠中さんを襲った病にありました。
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