イカを一杯まるごとボイルして、だし昆布、塩、みりんなどを加えた三杯酢にしっかりと漬け込む。
函館に古くから伝わる郷土食・酢いか。道南地方では、秋のはじまりから終わりにかけての肉厚のスルメイカが使われることが多く、地域によっては中にニンジンやシソ、ごぼうなどを入れることもある。
工場で生産される商品は食紅で色付けされるため、「酢いかといえばピンク色」とイメージする人も多いだろう。
イカが豊富に獲れていた時代、函館の家庭では保存食として手作りの酢いかが食卓に並ぶことはごく日常のことだった。しかしご存知の通り、近年のイカの記録的不漁によってこの伝統料理も少しずつ姿を消しつつある。工場生産するメーカーも、手作りで提供する家庭や飲食店も、だいぶ減ってしまった。
そんな中でも気を吐くのが、南茅部地区に拠点をおき6代にわたって続く網元・久二野村水産。イカの不漁が続く中でも、自社で獲れたイカににこだわって『桜吹雪』の名で酢いかを製造しており、社の看板商品の一つとしてフルシーズン通して販売している。
なかなか食べる機会はないかもしれない。それでも決して忘れてほしくない函館の食の遺産として、ここに記録しておきたい。
住所:函館市本通2-55-24
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