道内の大学4年生、るなさん。家にある食材で、パパっと料理を作るのが得意です。「親子丼の鶏肉は、ごま油で炒めておくと香りがよくなる」など、ひと工夫も手際よく取り入れます。
自炊を始めたのは小学校3年生のとき。両親の離婚をきっかけに、母親と2人の弟と暮らしていましたが、母親は「うつ病」に苦しんでいました。症状は、日に日にひどくなり、自傷行為に走ることも、たびたびありました。
るなさんは、料理だけでなく、ごみ出しや洗濯、掃除など、家事全般を担っていました。母親の調子が悪いときは、学校を休んで病院に付き添うこともありました。
「前兆のようなものがあるので、『ちょっとこのあと危ないかもな』という心配というか、見守りというか、ちょっとビクビクする状態になるときもありました」
家族の介護や世話をする子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれています。国が去年12月からことし1月にかけて行った調査では、「世話をしている家族がいる」と答えた生徒の割合は、中学生のおよそ17人に1人、全日制の高校の生徒のおよそ24人に1人にのぼりました。近年注目されるようになってきたものの、るなさんが子どもの頃は、「ヤングケアラー」という言葉すら、知られていませんでした。
「自分の環境があんまり異常だとは思わなかった。相談するっていう考え方自体がそもそもなくて、マイナスのことを友達や周りの人に相談したところで、何かが変わるとも思えなかったので…」
るなさんは日々の生活に精一杯で、家で勉強する習慣はありませんでした。小学校、中学校での成績は、いつも下位。中学校3年生になり、高校受験を前に、塾に行きたいと考えますが、経済的な理由で叶いませんでした。
そんなとき、母親が、ひとり親世帯や生活保護世帯の子どもを対象に、学習支援をしている団体を調べてくれました。「Kacotam(カコタム)」というNPO法人で、ボランティアの大学生らが支援に当たっています。
週1回のペースで通ううち、「自分の中で抱えていた苦労が少しずつ減り、『きょうKacotamあるから頑張れるや』って思うようになった」といいます。高校に合格した後も通い続け、週6回通うようになりました。
「高校卒業まで勉強を教えてもらったり、奨学金があることを教えてもらったりして、医療系の大学への進学を叶えることができました」
ボランティアは勉強に限らず、るなさんがやりたいことを応援してくれました。写真に興味を持ったときは、一緒に撮影に行ったり、発表会を開いたりしました。
るなさんは大学入学と同時に、Kacotamのボランティア側になることを決めました。「子どもが育った環境を理由に自分を犠牲にしてほしくない」という思いから、「子どもの意思を大事にすること」を心がけているといいます。
大学生になり、一人暮らしを始めたため、母親の世話を付きっきりですることはなくなりました。最近は、ときどき、ドライブを楽しんでいるといいます。子どものころに家族とどこかに出かけた思い出は、ほとんどありません。
るなさんのように、子どもの頃から家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」。先月公表された、道の初めての調査では、「自分が世話をしている家族がいる」と答えた中学生・全日制の高校生のうち、約8割が、「日頃の悩みを相談した経験」は「ない」と回答しています。
るなさんは、「ヤングケアラーや、ひとり親世帯など経済的に困っている家庭に、大学の授業料免除や経済的支援を、政策として取り入れてほしい。ヤングケアラーについては、介護サービスの導入や、当事者や家族が孤立しない関わりも考えてほしい」と話します。
「ヤングケアラー」など、若者にも身近な話題も争点になる、今回の衆議院選挙。
HBCでは10月31日(日)午後7時30分から、「#もんすけ選挙2021 初めての投票!」と題して、道内の高校生が政治について議論するWEB特番を配信します。
Sitakkeのお悩み相談室でもおなじみのインテリ女装家・満島てる子さんや、White Explosionのお2人をゲストに迎え、私たちの日常のトピックから、選挙についてざっくばらんに議論します。
YouTubeのチャット欄で、「選挙」に関する視聴者からの意見やコメントも募集するほか、Twitter上でも「#もんすけセンキョ」で意見やアイデアを募集!若者も、大人のみなさんも、選挙に関するソボクなギモンや意見をぜひお寄せください。
当日の配信は、こちらから。