2021.10.30

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小学生から約10年、うつ病の母を世話…「ヤングケアラー」からみる選挙

小学校3年生から自炊

道内の大学4年生、るなさん。家にある食材で、パパっと料理を作るのが得意です。「親子丼の鶏肉は、ごま油で炒めておくと香りがよくなる」など、ひと工夫も手際よく取り入れます。

自炊を始めたのは小学校3年生のとき。両親の離婚をきっかけに、母親と2人の弟と暮らしていましたが、母親は「うつ病」に苦しんでいました。症状は、日に日にひどくなり、自傷行為に走ることも、たびたびありました。

るなさん(当時11)と2人の弟

るなさんは、料理だけでなく、ごみ出しや洗濯、掃除など、家事全般を担っていました。母親の調子が悪いときは、学校を休んで病院に付き添うこともありました。

「前兆のようなものがあるので、『ちょっとこのあと危ないかもな』という心配というか、見守りというか、ちょっとビクビクする状態になるときもありました」

「異常だとは思わなくて」

家族の介護や世話をする子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれています。国が去年12月からことし1月にかけて行った調査では、「世話をしている家族がいる」と答えた生徒の割合は、中学生のおよそ17人に1人、全日制の高校の生徒のおよそ24人に1人にのぼりました。近年注目されるようになってきたものの、るなさんが子どもの頃は、「ヤングケアラー」という言葉すら、知られていませんでした。

「自分の環境があんまり異常だとは思わなかった。相談するっていう考え方自体がそもそもなくて、マイナスのことを友達や周りの人に相談したところで、何かが変わるとも思えなかったので…」

るなさんは日々の生活に精一杯で、家で勉強する習慣はありませんでした。小学校、中学校での成績は、いつも下位。中学校3年生になり、高校受験を前に、塾に行きたいと考えますが、経済的な理由で叶いませんでした。

そんなとき、母親が、ひとり親世帯や生活保護世帯の子どもを対象に、学習支援をしている団体を調べてくれました。「Kacotam(カコタム)」というNPO法人で、ボランティアの大学生らが支援に当たっています。

るなさんが通っていた、NPO法人Kacotamの学習支援

週1回のペースで通ううち、「自分の中で抱えていた苦労が少しずつ減り、『きょうKacotamあるから頑張れるや』って思うようになった」といいます。高校に合格した後も通い続け、週6回通うようになりました。

「高校卒業まで勉強を教えてもらったり、奨学金があることを教えてもらったりして、医療系の大学への進学を叶えることができました」

るなさんが入ったKacotamの写真部の発表会

ボランティアは勉強に限らず、るなさんがやりたいことを応援してくれました。写真に興味を持ったときは、一緒に撮影に行ったり、発表会を開いたりしました。

るなさんは大学入学と同時に、Kacotamのボランティア側になることを決めました。「子どもが育った環境を理由に自分を犠牲にしてほしくない」という思いから、「子どもの意思を大事にすること」を心がけているといいます。

カコタムで子どもと笑いながら勉強する るなさん(2020年撮影)

大学生になり、一人暮らしを始めたため、母親の世話を付きっきりですることはなくなりました。最近は、ときどき、ドライブを楽しんでいるといいます。子どものころに家族とどこかに出かけた思い出は、ほとんどありません。

るなさんのように、子どもの頃から家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」。先月公表された、道の初めての調査では、「自分が世話をしている家族がいる」と答えた中学生・全日制の高校生のうち、約8割が、「日頃の悩みを相談した経験」は「ない」と回答しています。

るなさんは、「ヤングケアラーや、ひとり親世帯など経済的に困っている家庭に、大学の授業料免除や経済的支援を、政策として取り入れてほしい。ヤングケアラーについては、介護サービスの導入や、当事者や家族が孤立しない関わりも考えてほしい」と話します。

若者の身近な話題をテーマに「選挙」を考えるきっかけを。

「ヤングケアラー」など、若者にも身近な話題も争点になる、今回の衆議院選挙。
HBCでは10月31日(日)午後7時30分から、「#もんすけ選挙2021 初めての投票!」と題して、道内の高校生が政治について議論するWEB特番を配信します。

Sitakkeのお悩み相談室でもおなじみのインテリ女装家・満島てる子さんや、White Explosionのお2人をゲストに迎え、私たちの日常のトピックから、選挙についてざっくばらんに議論します。

YouTubeのチャット欄で、「選挙」に関する視聴者からの意見やコメントも募集するほか、Twitter上でも「#もんすけセンキョ」で意見やアイデアを募集!若者も、大人のみなさんも、選挙に関するソボクなギモンや意見をぜひお寄せください。

当日の配信は、こちらから。

文:Sitakke編集部 IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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