2025.06.24

出かける

「ずっと見ていたい」飲み込まれるような美しさと、苦しさ 『国宝』は映画館で見てよかった【映画感想】

魅力②人の苦しさ、そこから生まれる美しさ

人はどうしてこうも一面的ではなく、単純には生きられないのかと、胸が締め付けられるような「それぞれの人生」が描かれていました。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

自転車に二人乗りして笑顔で走り抜ける少年時代。笑い合いふざけ合う友情も見え、ライバルとして切磋琢磨する青春物語の側面もたしかにあるはずなのに、きれいごとだけでは乗り切れない関係性に切なくなりました。

上方歌舞伎の名門の御曹司である俊介。生まれは任侠の一門で、才能を武器に世襲の歌舞伎界に飛び込む喜久雄。
その境遇から2人が抱えるであろう葛藤を予感しますが、想像を上回る展開が待っていました。

2人を分かつ「血」と「才能」を感じさせるシーンが何度も登場するのですが、同じ「血」でも、うらやむ場面もあれば皮肉に感じる場面もあり、単純ではない人の心に苦しくなります。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

言葉では表せない複雑な心の内を、全身ににじみ出す俳優たちの演技がすごい。

特に忘れられないのが、喜久雄がガタガタと手を震わせ、目の奥を震わせ、俊介に語りかけるシーン。喜久雄の言葉がグロテスクなほどに響き、そしてそれを受け止める俊介の表情。
2人の目から、こぼれ出す切迫した思いが伝わってきて、飲み込まれるような感覚でした。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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