大切な言語

吉原さんには、もう1つ大切な言語があります。
それは手話。

この日、吉原さんは、地元にある白老東高校にやってきました。

白老町では『手話言語条例』が制定されていて、町が小中学校、高校で手話講座を主催しています。

吉原さんは、白老町でNPO法人として活動する田村直美さんとともに、手話講座の講師をつとめています。
このときは、あえて"口話"ではなく、手話だけで授業をします。

「わたしの名前は吉原和香奈です。生まれつき耳が聞こえません」

吉原さんが手話を本格的に覚えたのは、社会人になって"デフフットサル"を始めたとき。小・中・高、そして大学は、聾(ろう)学校でなく、地域の学校に通っていたからです。

高校生にとっても、ろう者と触れ合う機会というのは、なかなかありません。

指文字から、手話の起源をいろいろ教えてもらうと…苦戦もしながら、いきいきと手を動かし、覚えようとしています。

伝えたいことを伝えるために

相棒の山下さんが手話を覚え始めたのは、新型コロナ拡大のとき。
みんながマスクで口を覆うようになり、吉原さんが、相手の口の動きを読み取れなくなったことがきっかけでした。

吉原さんと友だちであったときから聾(ろう)であることの壁はなかったという山下さん。

「遊んでいるときって、伝わらなくても問題ないじゃないですか。なんとなく、雰囲気でいけちゃう」

それが、仕事になるとそうはいきません。

「どうしても伝わらなくちゃ困ることって、いっぱいあるし…特に真面目な話をする、ほかに第三者を交えて、きちんと同じ熱量で話をしなきゃいけないときは、もちろん手話が必要だなぁって」

"伝えたいことを伝える"ための手話が、結果的に、2人の信頼関係をさらに深めたのです。

山下さんのそんな姿に吉原さんの思いも変化していきました。

「私、前は聞こえない苦しみは、聞こえる人にはわからないという風に思っているところがあった。でもいまは、彼女が理解しようと頑張ってくれる様子を見ると、私はそういう風に思っていては駄目だ、そういう考え方は捨てようと思いました」

HBC報道部

毎日の取材で「気になるニュース」や「見過ごせない事案」を、記者が自分の目線で深掘り取材し、「ニュース特集」や「ドキュメンタリー」を作っています。また、今日ドキッ!の人気コーナー「もうひとホリ」「もんすけ調査隊」も制作しています。最近は放送にとどまらず、デジタル記事、ドキュメンタリー映画、書籍など、多くのメディアで展開して、できるだけたくさんの人に見てもらえるよう心掛けています。北海道で最初に誕生した民間放送の報道部です。

https://www.hbc.co.jp/news/

この記事のキーワードはこちら

SNSでシェアする

  • X
  • facebook
  • line

編集部ひと押し

あなたへおすすめ

エリアで記事を探す

FOLLOW US

  • X