1987(昭和62)年、元町にある昭和初期建造の洋風邸宅・旧岡本家邸(現在の『ビハインド・ザ・カスク』)をリノベーションして誕生した中華レストラン『元町 八花倶楽部』。オープンしてたちまち人気店となり、多くのファンから愛されながら平成に入り閉店。ときは流れて2019年、同店の料理人として腕をふるっていた小西康範さんが別の場所で店を復活させて、大きな話題となった。そして2024年、小西さんのもとで長年中華の技術と味を磨き続けてきた料理人が独立し、この年に閉店した『八花倶楽部』の大看板を引き継いだのがこの店だ。
昔も今も、 八花倶楽部の代名詞といえばこのあんかけ焼きそば。味は当然のごとく塩である。かつてラーメンがそうであったように、またはやきそばがそうであったように、函館で「あんかけやきそば」といえばなぜか『塩』だった。それがいつの頃からか「正油ベースで大盛り」が幅をきかせるようになり、塩派は徐々に隅の方に追いやられているのが現状だ。しかしこうして、塩味のあんかけ焼きそばの総本山ともいうべき同店が、作り手が変わった今もこうして昔と変わらない味で提供してくれるのは頼もしい限りである。
高校時代に最初の八花倶楽部でアルバイトをし、その後小西さんが独立して大門でオープンさせた中華料理店『花琳(かりん)』、そして棒二森屋地下の中華惣菜店と、函館を代表する中華名人の背中をずっと見てきた現オーナーシェフ。
「なぜ八花倶楽部のあんかけがずっと塩なのかはわかりませんけど、たぶん小西さんが塩が好きだったんだと思います。だからこの料理に特別言葉を添える必要がないというか」と笑う。
いつの時代も塩味のあんかけ焼きそばを求められ、それに応え続けてきた八花倶楽部にとって、それはさほど特別なことではないのだろう。しかし皿から溢れんばかりに盛り込まれたイカやエビの海鮮と7種類の野菜、そして函館らしい絶妙な塩梅と麺の食感はまさにここだけのものだ。
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