2010年頃からまったく異なる本業のかたわら、小さく立ち上げた『珈琲文庫』のコーヒー焙煎士として個人や小売店、飲食店に自ら焙煎したコーヒー豆の販売を開始した川崎宏さん。焙煎士としての仕事ぶりと味の確かさは徐々に評判を呼び、取引先も増えて現在はこちらが本業となった。
以前、弊誌でも川崎さんについてのプロフィールを深堀りしたことがあったが、ここで改めておさらいしておく。
1971(昭和46)年、函館市大森町生まれ。父の逸朗さんは当時大門で人気を博した純喫茶『アカデミー』の支配人で、おのずと家でも専門店のような味のコーヒーが普通に出てくる環境で育った。
やがてコーヒーという物体に興味を持ち始めた川崎さんは、小学校高学年で抽出の実験を、中学生になるとフライパンで焙煎を始め、高校にあがると生豆を購入して自宅で自家焙煎を繰り返してバイト先もコーヒー専門店だった。
卒業後、社会に出てからは1970年代から札幌の珈琲文化を牽引してきた有名喫茶チェーン『可否茶館』に入社。20歳から37歳までの間に、チーフから店舗責任者、エリアマネージャー、営業、焙煎・品質管理と一通りのポジションを経験してきた。その後、函館に戻って畑違いの仕事に就きながら冒頭の『珈琲文庫』立ち上げへとつながっていく。
そんな川崎さんが、10年ほど前から挑戦してきたのが「オリジナル焙煎機の開発」だ。
きっかけは日頃関わりのある珈琲豆販売店『十字屋』(末広町)で、古い焙煎機が壊れたまま眠っているのを知ったことだ。当初65年ほど前に製造されたものと思われたが、要所に使われているビスが戦前のものと推測されるため85〜90年前、さらにそれより前の時代のものである可能性があるという。川崎さんはこの焙煎機を引き取り、状態のいい窯の部分を中心に再利用して自前の焙煎機をつくるという途方もない挑戦を始めた。
こうして自分たちの「好き」と「挑戦」のために、時間と体力を惜しみなく注いで昨年ついに栽培を開始。初夏に行われた植樹祭には多くの友人、知人、美容室の客が集まり、全員で記念すべき最初の苗を植えた。
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