2025.05.09
ゆるむ北海道の小さな町の、幻みたいなひと夏の話——。
かつて炭鉱で栄えた北海道・三笠市。
その豊かな自然と静かな街並みを舞台に、少し不思議な「ひと夏の物語」が紡がれます。
4月25日の午後6時半から、全6回にわたって放送中の連続ドラマ『三笠のキングと、あと数人』(通称・ミカキン)。
13年ぶりに北海道放送(株)が制作した本作は、アイドルを夢見て上京した青年・健太(演:高杉真宙)と、地元で何者かになろうとあがき続ける先輩(演:柄本時生)が、心にぽっかり空いた穴を抱えて再会し、小さな町で全力疾走する姿を描いています。
この記事では、出演者の久保田磨希さんにインタビュー。役柄や作品に込めた思いについてお話を伺います。
【今回の役どころ】野田真琴(演:久保田磨希)
三笠市の盆踊り実行委員。市政やイベントを取り仕切る存在。市長の側近の座を狙っている可能性がある…?
――「野田」役を演じてみていかがでしたか?
「市役所で働いている『野田さん』という人がいるんだ」と、ドラマを見た方に錯覚してもらえるような演じ方を心がけました。今回のドラマは、街も市役所も全て実在のもので撮影しているということもあるので、いつも以上にリアルさを追求しました。
そのために、撮影が空いたときは、三笠に馴染めるようにとずっと街をウロウロしていました。
(撮影が)休みの日だから、札幌や旭川に遊びに行くのではなくて、とにかく三笠市を散策する。
三笠市立博物館に行って、ジオパークを回って…といった過ごし方をしていました。
どれだけ自分がこのまちの人になれるか。そういった視点で準備をすることで、自信に繋げる。それが役に生きるか生きないかは分からないけれど、もうそれしか自信に繋げることができないので。
今は、インターネットで何でも調べられますけど、たとえば三笠市立博物館には、実際に足を運んでみないとわからないものがいっぱいあって。やっぱり行ってよかったなって思うし、このやり方は私には合ってるなって思いました。
あるとき、まちの八百屋でおばあさまに「あれ、どこの子だっけ?」って、私を三笠市民だと認識してくれたときには「やった~!」って、すごく嬉しかった。大成功です!(笑)
――ロケ地である三笠市のまちの印象や、人の印象はいかがでしたか?
まちの人が「あそこ」って言うところが、ものすごく遠くて(笑)。
東京だと徒歩30分の感覚で、徒歩2時間とかね。その距離感の違いが面白かったですし、スケールの違いに初めは驚きましたけど、それが気持ち良くなってきました。どこを見てもひまわり畑が広がっていて…すごく気持ちのいい町だなと思いました。
――撮影期間中に印象に残っている出来事はありますか?
やっぱり、「三笠北海盆おどり」ですね。普段は街の中に人があまりいないのに、お祭りとなると人がいっぱい出てくる(笑)。お祭りの日に人がうわーって櫓(やぐら)に向かって集まっていく様子に、ちょっと涙が出そうになってしまいました。
私は、京都府の福知山市出身で、京都の中でも北の方の、三笠と同じく盆地が地元です。
お祭りは私にとっても特別な日でした。三笠と同じように、一年中、祭りに向けてみんなが本当に頑張っているんです。私が地元にいたときはまだ学生で、子供なりの楽しみがあったけれど、大人になった今思えば、きっと大人なりの楽しみもあったんだろうなと思い起こすきっかけになりました。
その頃のイメージと、大人が頑張ってくれていたんだという、子どもの頃は知らなかった裏側みたいなものも見えたりして。もちろん市民の方にとっては、人が遊びに来てくれるだけでいいと思うんですけど、お祭りをこうして用意してくれている人がいるんだということを、今回、「野田さん」役をやらせていただいたことで、しみじみと実感することができました。
――今回のドラマは、若者がもがきながら自分の人生に向き合っていく物語です。ご自身は、うまくいかない時や何か壁にぶつかったときにどうしていますか?
私はすぐ他人と比べて落ち込むんです。毎日といっていいくらい。今って、子どもに「他人と比べなくていいんんだよ」という時代ですけど、他人と比べて「一番を取れ!」っていわれる時代に私は育ったので。もう毎日のように「自分はなんでこんなことができないんだろう…。あの人はできるのに…」って落ち込んでしまうんです。
じゃあなぜ今こうしてまっすぐ立っていられるかというと、どれだけそれ(俳優という仕事)が好きか、情熱をかけられるかだと思うんです。挫けそうになっても好きだからやる。それでいい。
今回のドラマで、高杉真宙さんが演じた主人公「健太」も同じだと思うんです。
たとえ、夢だったアイドルになれなくても、仕事にできなかったとしても、好きなことは好きにやればいい。
今回演じさせていただいた「野田さん」も、今は「お祭り」を成功させることを生きがいにしているけれど、本当は、目指していたものは違ったかもしれないという気がするんです。
例えばテニスでオリンピックに出たいと思っていたかもしれない。でも、お祭りに出会っちゃって…様々なことがありながらも、お祭りを成功させることに楽しみを見つけ、それに情熱をかけている人だと思いました。生きがいとまではいかなくても、「ただ、それが楽しい」ということに尽きてもいいと思うんです。
自分の人生のサイドストーリーとして、目の前の好きなことに一生懸命になっていたら、挫けずに自分の人生を生きられるんじゃないかな。
――本作の魅力はどんなところにあると思いますか?
広い北海道の小さなまちで起きる事柄なんですけど、モヤモヤしたり、踏ん張ったり、ジャンプする気持ちだったり…様々な人の様々な気持ちが点在する物語です。「あぁ~わかる」とか、「そんなことないだろう」と思いながら見ていただいて、見てくださった人の人生が豊かになればいいなと思います。
【久保田磨希】
京都府出身。存在感のある個性派俳優として、フジテレビ『大奥』シリーズ、NHK連続テレビ小説『まんぷく』、『舞いあがれ!』、大河ドラマ『花燃ゆ』、映画『夜明けのすべて』など、確かな演技力で幅広い役柄をこなす。現在放送中のテレビ朝日『ホンノウスイッチ』に出演中。
【放送概要】
■番組名:Nisshoドラマスペシャル『三笠のキングと、あと数人』
■放送局 : 北海道放送株式会社(地上波北海道ローカル)
■放送日時: 2025年4月25日(金)午後6:30スタート 毎週(金)全6話
■再放送日時:2025年4月29日(火)午後11:59スタート 毎週(火)全6話
■主 題 歌 : GLAY/「Beautiful like you」
■番 組 HP : https://www.hbc.co.jp/tv/mikakin/
【STORY】
アイドルを夢見て上京した青年・健太と、地元で何者かになろうとあがき続ける先輩。心にぽっかり空いた穴を埋められずにいる二人が再会し、町の未来を変えようと動き出す。
現代社会での生きづらさを抱えた若者たちが巻き起こす騒動と、波乱に満ちたひと夏の日々をコメディタッチで描いた、魂をゆさぶる青春群像劇。
夢を追って転んでも、笑ってまた立ち上がればいい!小さな町で全力疾走する若者たちの魂の物語が、今ここから始まる ── 。
監督:榊原有佑、門馬直人、針生悠伺
脚本:我人祥太、林青維 原案:田邊馨
出演:高杉真宙、柄本時生 / 森田想、奥野瑛太、黒田大輔、阿部進之介、久保田磨希、柾木玲弥、皇希、しゅはまはるみ、東てる美 / 竹中直人、西岡德馬
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取材: 山田文裕
文・編集:Sitakke編集部 ナベ子