2025.03.22

暮らす

「振り返るとクマがいた」私が何度もヒグマに遭遇した理由には、対策のヒントがある 『劇場版 クマと民主主義』

クマ、そして倒れている人を目の当たりにした日

ニュースで何度もクマについて伝えてきましたが、出没や被害は全道で相次ぎました。「これまでの教訓を知っていれば防げたのでは」と思う事故もありました。
各地でクマに怯える人、大切な人を失った人の声を聞くたびに、悔やんできました。

2021年6月、札幌市東区の住宅地にクマが現れました。
早朝、上司からの電話で目を覚ましましたが、東区は山とも接しておらず、上司は「見間違いじゃないか」と迷っていました。
「もし本当だったら現場に行ってほしいから、いつでも出られる準備をしておいて」と言われましたが、「わかりました、今すぐ行きます」と答えました。

それまでの各地の取材で、何度も「ここにクマが出るなんて、まさか」「今までこんなことなかったのに」という声を聞いていたため、「もうどこに出てもおかしくないんだ」という危機感を持っていました。

『劇場版 クマと民主主義』

その後、カメラマンが乗っていたタクシーの近くをクマが走り去りました。
情報だけでなく、映像があって初めて伝わるものがあります。
本当に住宅地にクマがいる…私たちも、この映像で初めて事実として衝撃を受けました。

現場に向かうタクシーの中で、次々に寄せられる目撃通報の場所を地図に書き出しました。クマは猛スピードで広い範囲を移動していることがわかりました。いつどこでばったり人に出会うかわかりません。

カメラマンと合流しました。決して車からは降りずに、目撃情報をもとにクマの移動ルートを予想しながら住宅地を進みました。
歩いている人を見つけるたびに窓を開け、カメラマンと一緒に「クマいる!」「家の中に戻って!」と叫びました。

角を曲がったとき、目に飛び込んできたのは、足でした。

札幌・東区(2021年)

人が倒れていました。赤い血が見えました。
警察官が駆け寄っていきます。倒れている人は、動きません。

警察署も混乱しているのか、「けが人は2人」「いや、3人…」と、こま切れに情報が入ってきました。
この日、4人が重軽傷を負いました。

札幌・東区(2021年)

この地域に土地勘のあるカメラマンで、「あっちのほうに緑地がある」と教えてくれました。「クマはそこに向かうかもしれない」「広い緑地なら発砲許可が出るかもしれない」と思い、緑地に向かいました。

背の高い草の中に、身を隠したクマ。警察やハンターがプレッシャーをかけ、飛び出してきたところで、銃声が響きました。

札幌・東区(2021年)

後からヘリコプターの映像を見返すと、クマが草に身を隠そうと駆け込む姿が映っていました。
「クマは背の高い草に身を隠して移動する」、これまでの取材で知識として学んだことを実際に映像で見て、「また同じ課題が繰り返されている」と、胸を痛めました。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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