2025.03.22

暮らす

「殺さないとダメ?」ハンターにぶつけた質問 クマに出会った新人記者が知った現実 『劇場版 クマと民主主義』

ハンターが爆竹を投げます。

バチバチッと大きな音が鳴り、クマは体を隠しました。

『劇場版 クマと民主主義』

しかし、その目はまだこちらを見ています。
フェンスにかけた前足も降ろしません。住宅地に降りたいという、強い執着を感じました。

このとき私はただ、「早く山に帰ってくれたらいいのに」と思っていました。

小さな頃から動物が好きだった私は、「クマを殺すなんてかわいそう」と、正直、ハンターに悪い印象を持っていました。
札幌出身で、身近で出没情報があり集団下校をしたことなどもありましたが、それでも「人もクマも傷つかないのが一番いい」と思っていました。

目の前にクマがいるこのときでさえ、落ち着き払い、人を襲おうとする気配のないクマの様子に、怖いとはまったく感じませんでした。
ただ、怖いと思わないことの怖さを、この後学んでいくことになります。

『劇場版 クマと民主主義』

住宅地には、クマの食べものになるものがありました。それにクマは引き寄せられていたのです。
その個人が悪いのではありません。長年の人間社会の習慣や、人口減少などの変化が積み重なり、数十年かけて、クマが出やすい環境ができてしまっていたのです。村だけでなく、全道・全国で起きていることです。

クマは本来、人を怖いと思っていて、住宅地には近づきたくありません。
しかし、一度住宅地でおいしい思いをしたクマは、繰り返し現れます。
そして住宅地に出ても人に攻撃されないことも学習します。
人に出会ってさえ、ただ見ているだけで攻撃はされない…そうして人に慣れていくのです。

人を怖いと思っているクマなら、クマ鈴の音などで先に気づいて逃げてくれます。
しかし慣れているクマは、ばったり人に出会うリスクが高まります。もともと襲うつもりはなくても、ばったり出会えば、とっさに身を守るために人を攻撃することもあります。

「かわいそう」「山に帰ってほしい」そう願いながらクマを見つめていた、無知な私も、クマの人慣れを進めてしまった、そして駆除しか選択肢がない状況へと導いてしまった、一因なのでしょう。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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