この作品は、見る人それぞれ、どの視点で感情移入するのかで、見終わったときの感覚は違うのかもしれません。
本当はまっとうに生きたい、だけど理不尽な状況のもとで、必ずしもまっとうな方向に歩めない、頑張れない、そういう人だっている…。
自分でわかっている、葛藤もある。そこに足を踏み入れちゃダメなことはわかっている。
でも、自分自身をも傷つけながら、生きるためにその道を選択してしまっている…。
この境遇って、その人のせいだけじゃないのでは…と思えてきて、つらい境遇に胸が締め付けられて、私には「えぐい」と感じられました。
そういった部分に感情移入して見ていると、結局、私の頬を涙が伝ってしまうのは、やっぱり仕方がないのかもしれません。
多聞は言葉を発するわけではないけれど、人の心にすっと入ってきて、寄り添う優しさがあります。
それはベタベタしすぎてはいませんが、一緒にいて楽しんでいるように見え、愛情を持って接しているのも感じます。
表情は優しく、まとっている空気感は凛としていて、強さ、信念がある感じが、とてもかっこよくもあります。耳を立てて、目を輝かせ、「クーン」と鳴く姿は、心に響きます。
健気な想いが伝わるのが、多聞の魅力でもあると感じました。
人はさまざまな境遇に翻弄されても、ちゃんと、再生していくことができるのではないでしょうか。
孤独な闇に包まれた心を、解きほぐす多聞。
多聞を必要とする人たちに対して、多聞はどう感じてこの行動をしているのかな、など想像しながら見てみると、多聞が希望の道を見つけるお手伝いをしてくれているように見えてきます。
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