2025.04.01
暮らす自治体職員には異動がありますが、野生動物の対策には、長い年月をかけた調査や、地元の住民との信頼関係の構築、専門知識に基づく判断が必要です。
秋田県では、初の「野生動物の専門知識を持つ職員」として2020年に近藤さんを採用したことに始まり、「ツキノワグマ被害対策支援センター」を作ったことで、クマ対策への本気度を示してきました。
センターの職員は10人ほど、うち専門職は近藤さん1人の体制でしたが、秋田県は国内で6番目に広い面積を持ちます。よりきめ細かい対応のためには、徐々に人を増やしていく必要があります。
そこで2024年度には、一気に2人の専門職員を新たに採用しました。今回の取材にも同席してくれましたが、1人は、「大学でクマについて学ぶ中で、必要だと考えていた自治体の動きを、近藤さんがどんどん実現していた。それを知ったこともあって、専門職に応募した」と話していました。
取材中、近藤さんと新人2人が和やかに話し合う雰囲気だったのも印象的でした。
近藤さんが「Q&Aのたたき台を作ったのは自分だけど、新人2人も含めてまわりにも穴がないかの確認など協力してもらった」と話すと、「穴なんてなかったですけどね!」とすぐにフォロー。
私が「いろいろな立場の人に配慮した回答」について質問していると、「ハンターの立場についても話したほうがいいのでは」と意見してくれ、近藤さんも「たしかに!」と話し出すなど、頼もしい一面も見えました。
近藤さんは県初の専門職員として、いろいろなメディアで取り上げられています。県が専門職員の重要性を認識し人を増やしたことや、実際に新入職員ともチームワークを築いている様子からも、活躍ぶりが伺えます。
しかし近藤さんは、自分は「サポートの立場でしかない」と話します。
「県にいる専門職員として、市町村のサポートが大きな使命だと思っています。現場で最前線に立つのは市町村職員のみなさん、その先に農家さんなど住民ひとり一人がいます。市町村には専門職員はいないし、異動もあるし、少ない人数であれもこれもやっていて、その中で一から自分で勉強するのは負担が大きい。県職員として、市町村が動きやすくなるように仕組みづくりなどから後方支援がしたいと思っています」
なぜ専門職員が必要なのか。都道府県の職員と、市町村の職員、それぞれに求められることは何か。
そのお話は、2月にあった、クマに関する大きな国の動きにも関連していました。
後編の記事でお伝えします。
【後編:クマ対策の「大きな前進」?法改正が進む今こそ必要な“自治体の体制” 秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
Q&A全文は、秋田県のホームページ内「クマについてよくあるご意見・ご質問」からご確認いただけます。
連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。
文:Sitakke編集部IKU
2025年3~4月上映の劇場版「クマと民主主義」で監督担当。2018年にHBCに入社し、報道部に配属されてからクマの取材を継続。2021年夏からSitakke編集部。
※掲載の内容は取材時(2025年2月)の情報に基づきます。
■「殺さないとダメ?」ハンターにぶつけた質問 クマに出会った新人記者が知った現実
■「クマに見られる」体験に、あなたは何を感じるのか。『劇場版 クマと民主主義』に抱いた「震えにも近しい感覚」
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