かつては蝋(ろう)を、現在は塩化ビニールを主原料に極めて実物に近いリアリティでつくられる料理の模型=食品サンプル。
その歴史の始まりは昭和初期といわれ、本格的に広まったのは高度経済成長期における百貨店の躍進がきっかけ。どこの百貨店の大食堂にも常に多くの客が訪れたが、客から「メニュー名だけではどんな料理かわからない」と店員が商品説明を強いられ、オペレーションに支障をきたすようになった。そこで入口に食品サンプルを並べることで、入店と同時に注文する料理を決めてもらい、店を円滑にまわすという方法が確立。やがてそれが一般の飲食店に浸透し、私たちが子どもの頃に洋食屋や喫茶店の入口で胸をときめかせたあの景色が全国に広まった。
しかし時代の流れとともに飲食店から姿を消していき、いまではたまに見かけると「珍しい」と感じるほど稀少な存在になりつつある。
ちなみに函館では金森赤レンガ倉庫の『函館ビヤホール』や函館朝市の『どんぶり横丁』などの大箱施設、また個人店では『パーラー フタバヤ』(美原)や『レストハウス樹林』(時任町)などの洋食店などで健在。極めて数は減ったが、ギリギリのところで踏みとどまり残っている。
■一棟貸しの宿に生まれ変わった稀少な明治建築。【ちょっと中を覗きたい…函館リノベ宿】
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