2025.02.10

暮らす

地元メディアが勝手に選ぶ函館文化遺産―食品サンプルのある風景

かつて胸をときめかせたあの景色は今

かつては蝋(ろう)を、現在は塩化ビニールを主原料に極めて実物に近いリアリティでつくられる料理の模型=食品サンプル。

末広町『函館ビヤホール』入口前の食品サンプルケースは、食欲をそそる豪華絢爛な内容。サンプルのつくりも複雑かつ精巧だ。

その歴史の始まりは昭和初期といわれ、本格的に広まったのは高度経済成長期における百貨店の躍進がきっかけ。どこの百貨店の大食堂にも常に多くの客が訪れたが、客から「メニュー名だけではどんな料理かわからない」と店員が商品説明を強いられ、オペレーションに支障をきたすようになった。そこで入口に食品サンプルを並べることで、入店と同時に注文する料理を決めてもらい、店を円滑にまわすという方法が確立。やがてそれが一般の飲食店に浸透し、私たちが子どもの頃に洋食屋や喫茶店の入口で胸をときめかせたあの景色が全国に広まった。

しかし時代の流れとともに飲食店から姿を消していき、いまではたまに見かけると「珍しい」と感じるほど稀少な存在になりつつある。

ちなみに函館では金森赤レンガ倉庫の『函館ビヤホール』や函館朝市の『どんぶり横丁』などの大箱施設、また個人店では『パーラー フタバヤ』(美原)や『レストハウス樹林』(時任町)などの洋食店などで健在。極めて数は減ったが、ギリギリのところで踏みとどまり残っている。

peeps hakodate

函館の新しい「好き」が見つかるローカルマガジン。 いまだ開港都市としての名残を色濃く漂わせる函館という街の文化を題材に、その背後にいる人々を主人公に据えた月刊のローカルマガジン。 毎号「読み物であること」にこだわり、読み手の本棚にずっと残り続ける本を目指して編集・制作しています。(無料雑誌・月刊/毎月10日発行)

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