そんな辺境で2023年7月に独立開業をしたのが店主の堀川絵巨さん。店をかまえるまでは、函館朝市内の魚屋直営の食堂で11年働いた。当然ながら魚の目利きである。しかも19歳のときには本町の名店『鮨竹亭』にバイトとして入り、すでにこの時点で魚の仕入れや捌き方の基礎を学んでいるため、仕事として魚と接してきたキャリアでいえばベテランの域である。
噂の刺身定食は、6〜8品の日替わりの刺身盛合せに加え、堀川さんが“気分”でつくる小鉢(小皿)が4品。毎日、自由市場と中島廉売に足を運んで選ぶ魚の鮮度・味は申し分ないが、小鉢のクオリティにも舌をまく。
店主は「なんもその日のノリでつくってるだけさ」と函館訛りで照れながら多くを語らないが、客の中にはいつも料理が違う小鉢を楽しみに遠路はるばるやってくる者も多いという。
刺身だけでなく、単品の焼魚や生ラム焼や牛バラ焼肉などの単品の肉料理、赤ウインナーや明太だし巻き玉子などの一品料理もあるので、ご飯と味噌汁を組み合わせてお好みの定食にすることもできる。もちろんハンドルキーパーさえいれば、居酒屋使いも可能だ(営業時間は12時〜22時)。海の気配のない、どちらかといえば山の中で味わう旨い魚は、街の真ん中では出会えない正真正銘のご馳走だった。
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