宝来町から東川町へとまたぐ緑豊かなグリーンベルトの角地に、一軒の黄色い建物がある。築年数は不明だが、建物を管理する会社の見立てでは築80年以上〜100年未満といったところらしい。長い年月のあいだ空き家になっていたが、かつての所有者が西部地区の古い建物を大切にしてきた人物で、貸家だったこの建物もまめに手を施して管理していたという。
2019年、こども絵本とおもちゃを取り扱う会社『札幌第一こどものとも社』が函館での営業拠点としてここに入居することになり、大幅なリノベーションを行われた。内装工事を請け負ったのは、11ページの記事にも登場した恵庭在住の宮大工で鮭箱リメイクの家具・アート作品で知られる村上智彦さん(Gen&Co)。最終的に外壁全面を黄色に塗り、この建物自体に『東川イエローハウス』という新しい名がつけられた。
それから5年が経った現在、この建物の正面角地部分に入居するのはギャラリー&イベントスペース『room』。ここを借りているのは、不動産会社に勤める代表者の八木野創太さんと、同世代の仲間たち。彼のほかに宿泊施設の企画運営会社、建築業、学校教諭とそれぞれ職種の違う4人が共同で借り、1F部分を一般に供用し、2F部分を自分たちだけのプライベートスペースとして使っている。
「最初は4人の秘密基地みたいな形で鍋パーティーができる程度のアパートの一室を探してたんですが、ここを紹介してもらってあまりに素敵だったので即決しました。その後、こんなにいい場所を自分たちだけで使うのはもったないという話になって、インディーズの作家さんの個展ができるギャラリーや、音楽などのライブスペースとして開放することになりました。ゆくゆくは夜カフェみたいなコンセプトで、夜にフラッと寄ってくつろげる店としても展開できたらいいなと思ってます」(八木野さん)。
■【函館】光と影、今と昔が交錯する「朽ちていく美」の異世界。
道南の記事一覧:【道南のお気に入りを見つけたい】