原作の染井為人さんが映画に寄せたコメントには、「感無量です。ぼくが描かなかった部分をあえて主軸に置いていて、映画『正体』は小説『正体』のアンサー作品だと思います」との言葉がありました。
小説ではどのような描き方だったのかとても気になって、後日、原作本も買って読んでみました。
染井さんのこの言葉は、読み終えるととてもしっくりきました。染井さんが込めたメッセージは、ちゃんと映画を見ても伝わりました。
600ページ以上の原作を映画にするのに、ものすごくよく練られた脚本だと感じました。原作を読んだ方にこそ、ぜひそのアンサー作品である映画を見てほしいです。
そして、本の世界でイメージしていた別人たちになっている逃亡犯は、映像化してもちゃ
んと5つの顔を持つ人物として存在しているわけで、その横浜流星さんのなりきる姿にも
ハッとすると思いました。
「演じる」ではなく、役を「生きる」横浜流星さんを目撃してほしいです。
得意のキレのあるアクションシーンにも目を奪われますし、何と言っても、あの美しい涙
と表情をぜひ大きなスクリーンで見てほしいです。
愁いを帯びた心の闇、葛藤が見事に表現されていて、これは、横浜流星さんの代表作を目撃している、という気持ちにもなりました。
「天使の梯子(はしご)」という現象をご存じでしょうか。
くもっていたと思ったら、雲の隙間から太陽の光がさっと地上に差し込む、あの空の様子です。
光が、やんわり見えたり、でもやっぱり隠れたり、一気に暗い方へいってしまったり、逆に明るく強い光が見えたり…。
出会う人たちとの交流で希望が見える、でもやっぱりまた逃げないといけない状況がやってくる…。
感情がうごめく感じが、空から注ぐ「天使の梯子」のようにも思えて。
光の行方が、物語のどっちに傾いていくか、見ているこちらの心の動きもリンクしていくような感覚でした。
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