2021.09.16
深めるは~い皆さん、ごきげんよう!満島てる子と申します。
普段はバーの店長だったり、LGBTパレードの実行委員として人前でおしゃべりしたり。札幌でちょこまかと何かをしている女装子のゲイです。
こちらの お悩み相談コラムでは、「この相談者さんの気持ち、めっちゃわかるわ…!(泣)」「ぎゃー!今回も、クセもりもりなお悩みキターッ!」なんて火を噴きつつも、楽しく書いてます。
今回は、あたしが副実行委員長を務めさせて頂いてる「さっぽろレインボープライド」について、ちょこっとご紹介させてもらいたくって、筆をとった次第であります。突然「なに?レインボー?プライドって?」と思われかねない文言からはじまってしまったけれど…。
LGBTパレード(英語ではPride parade)とは、ゲイやレズビアン、様々なセクシャルマイノリティの当事者、およびその理解者・支援者(Allyとも言います)が、集合して街中を練り歩くイベントのことです。最近だと全国各地で行われるようになりましたが、札幌は今年で初開催から25年。毎年秋に開催しています。
あたしったらその実行委員会に所属しているんだけど、メンバーとして活動するようになってから4年目になるんです。
いつの間にか、副実行委員長もやらせてもらうようになり……とはいえ、とんだポンコツ副委員長だけどね!笑
さて実は来る9月19日(日)、昨今の新型コロナウイルスの状況もふまえ、様々な迷いや懸念もあったのですが、実行委員たちの間で何度もミーティングをした結果、かたちは大きく変えながらも、例年のように 「さっぽろレインボープライド」を開催する運び となりました。
札幌の中心街を舞台に開催されるパレード。
その様子を見たことのある人の中には、きっとかなりの華やかさに驚いた方もいるはず。
色とりどりのバルーンを持った大勢の人々(2019年の来場者はなんと5000人!)が列になって行進し、
大きくてきらびやかな先導カーが「ゲイアンセム(※注1)」 を流しながら進んでいく様は、主催者の立場から見ても迫力があります。
そんなフェスティバルのような様子から、キラキラした印象を持たれることも多いパレードですがもは、そもそ一種のデモンストレーション活動。
参加するセクシャルマイノリティたちにとっては、「あたしたちはここにいるんだ」と叫ぶことのできる貴重な空間であり、
自分たちに押し付けられた格差や差別を社会問題として世に訴えかける大切な時間でもあるんです。
それぞれのしたい恰好をして、言いたいことをプラカードや旗に掲げて歩く。札幌で開催されたどの年のパレードの写真を見ても、そんな人々の姿が必ず映っています。
パレードが目指すのは、単に街を歩くことだけではありません。そこに参加する人たちを“仲間”としてサポートすることも、大事な仕事のひとつです。当事者が“当事者”として生きていくために必要な情報を提供したり、誰かと誰かがつながる機会を作ることでLGBTコミュニティの活性化をうながしたり。
講演会や交流会など様々な関連イベントを、さっぽろレインボープライドでは毎年開催しているのですが、それはこうした意図があってのことなんです。
年に一度開催されるLGBTの “お祭り”でありながら、“真面目さ”も置き去りにせず、多様性の呼びかけを様々な角度から行っていく。
そんな複雑で、いろんなものをひっくるめた催しがパレードだと、あたしはそう思っています。
パレードの運営は、もうそれはそれは大変!毎年、成長するエベレストでも上ってるみたい。
札幌でのパレードを現在主催する団体「さっぽろレインボープライド実行委員会」が立ち上がったのは2018年からなのですが
(あたしが関わるようになったのはこの年から)、思い返すと初年度から今まで、ずーーーーっとハプニングの嵐でした。
用意の時点でメンバー同士の大修羅場があったり、「え?ねぇ今年台風直撃じゃん!」と天気予報見て焦ったり。笑
もちろん本番なんて全員なにもかもに大慌てで駆けずり回る始末……いや違うのよ、がっつり計画練って当日迎えたはずなのによ?なんなのかしらね、一生の謎。
でも、そんな命削ってるわぁって思う瞬間も多々ありながら、いざ行進!という瞬間を迎えると、パレードを歩く人たちの笑顔や沿道のあたたかい反応に、運営側であることを一瞬忘れて「あ、自分はここにいていいんだ、この街で生きていていいんだ」という気持ちに毎年させてもらうんです。
今でこそゲイの女装としてオープンに生かさせてもらっているあたし。
ですが、故郷の三重県にいるときはもちろん、札幌でもつい数年前まで、ゲイであることを誰にもカミングアウトしていませんでした。
なんだろう、とっても怖かったんですよね。
みんなの“普通”と違う恋をして、みんなの“普通”では考えられないような方向に心惹かれる罪悪感。それが周りにバレてしまったらどうしようという不安。
でも同時に、このまま誰にも自分のことをきちんと受け止めてもらえないまま、死んでいくのではないかという孤独感もたくさんあって……。
ただただ、つらかった。
そこから様々な過程を経て、札幌のLGBTコミュニティに受け入れてもらい、少しずつそのつらさを解きほぐしてもらいながら、いろんな人に支えられてこうして生活をしているのですが……。
毎年パレードの日を迎え、その空間に立つたびに、昔の自分がいろんな枷に縛られていたこと、そこから前に進ませてくれるたくさんの出会いがここ札幌であったこと、そして、この北の大地がおのれの居場所だということを強く感じるのです。
あたしを救ってくれた街、あたしにもう一度生きる楽しさを教えてくれたコミュニティが、惜しみなく輝く瞬間。
それを目にするとき、1年間の準備のつらさなどどこかに行ってしまうぐらい、感動し勇気づけられている自分がいつもいます。
その瞬間にたどり着くために、今年も実行委員たちは(もちろんあたしも!でも何度も言うけどポンコツなの)、パレードを開催しようと全力を尽くしてきました。でも、去年と今年のエベレストの成長っぷりと言ったら、もう絶句レベル。
本当に何なのよコロナって。あったま来ちゃう!
去年は感染状況が落ち着いていた時期だったから、みんなと一緒に行進できたものの……。
2021年はまん延防止、緊急事態宣言と、開催が近づくのに合わせるかの如く、刻一刻と事態が悪化していきました。
委員会のメンバーの間でも、話し合いに話し合いを重ね、出した結論が「オンラインでの企画をメインにする」というもの。
パレード行進自体は行うこととし、その様子も配信の中で取り上げるのですが、参加できるのは新旧の実行委員だけ。例年のようにたくさんの人に参加してもらうようなやり方は、密を避けるという観点からあきらめざるをえませんでした。
正直、苦渋の決断だったことは否めません。
たくさんの笑顔に今年も会いたかったし、みんなでそれぞれの思いをその一歩に変えて、一緒に札幌の街を歩きたかった。
でも、今回は「さっぽろレインボープライド」としてできる最善の案をメンバーそれぞれが出し合い、冷静に考えた上でこのかたちをとることとしました。
それぞれの場所から、それぞれのかたちで。当日の配信は、ぜひ多くの方にみてもらいたいと思っています。
もしかしたらこの開催形態ですら、まだその規模について検討の余地があるのかもしれません。
「行進自体、完全に取りやめるべき」という意見が来るかもしれないなとも思っています。
でも「通りを歩く」という、この札幌で25年にわたりずっと受け継がれてきたパレードの根本は、どうしてもかたちにしたい。
四半世紀この札幌を行進し、その中で「あたしたちはここにいる!」「いろんな性のかたち、あっていいんだ!」と叫び続け、伝え続けてきてくれた積み重ねがあったからこそ、今ようやく”LGBT”というコミュニティとして、あたしたち当事者はこの街を連帯の場所とすることができているのですから。
当日は昼過ぎから配信を開始し、様々なスタジオ企画もお届けしながら、パレード行進を中継のかたちでご覧いただきますが、「歩きもし、オンラインもやる!」という私たちの方針の裏には、そんな気持ちがあることを知っていてもらえればうれしいです。
とはいえ、現在その方針のせいで、「パレード行進だけじゃなくて生配信の用意も!」と、
まさかの普段の2倍の忙しさをこの直前に味わっているんですけどね。笑
あーん、当日までに諸々間に合うのかしら⁈いやもう、間に合わせるしかないのよね……。
ポンコツ副実行委員長、最後まで気張りたいと思います(ポンコツって言うの何回目よ)。
トークコーナーの司会も務めたりするので、みんなよかったら当日、画面の向こうから応援してくださいね!
今日は本当にたくさん、個人的な内容も含めて、パレードへの想いを話させてもらったわ。みんな読んでくれてありがとう。
最後に「やだ、ありがち!」って話かもしれませんが、宣伝をさせてください。
さっぽろレインボープライドは9月19日(日)、13:00からスタジオライブをスタート(予定)。
こちらの公式YouTubeチャンネルから放送なので、みんなどうぞご覧ください(何ならチャンネル登録してね!笑> https://www.youtube.com/channel/UCKB3rl1Q_57VJUtR_cFWxGA/featured
YouTubeのコメントは適宜拾うから、みんなどんどん書き込んで、オンラインという新しいかたちのパレードを一緒に楽しんでくれると嬉しいわ!
そうそう、ちなみに実行委員会、やってるのYouTubeだけじゃないのよ。
割とこの3つは頻繁に更新してるから、最新情報はここからどうぞご覧ください
Twitterとインスタはもうぜひフォローしてもらえると、てる子感激!でございます。
特にTwitterでは「#札幌とパレードと私」というハッシュタグ企画が現在進行中!
実行委員会への応援メッセージや、パレードでの思い出などなど、さっぽろレインボープライドに関するツイートを幅広く募集しています。
皆さんのつぶやきは、ピックアップをして当日の配信の中でご紹介させていただくので、よかったらどんどんつぶやいてね!
さっぽろレインボープライドは実行委員会一同、2021年もたくさんの方と会えるのを、画面の上からとはなりますがお待ちしておりますよッ。ではでは皆さん、Sitakkeね~!
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文|満島てる子
オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。(オープンリーゲイ=性的指向や性同一性をオープンにする生き方)
※注1:「ゲイアンセム」=LGBTコミュニティの間で広く好まれている勇気づけられる歌。シェールやマドンナ、レディーガガはその代表です。あたしは中でも、イギリスのプライドパレードなどでかかることの多いAlison JearのI Just Wanna Fucking Dance(2012年)を聞くたび、心が震えます。