2024.11.04

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「誰が見ても楽しめる作品」をつくりたい。札幌で20年以上活動し続ける劇団、“弦巻楽団”の想いとは

最新作は、亡き師匠から託された作品。

堰八アナ: 11月21日から24日、最新作「ファーンズワース・インヴェンション」を上演されますね。

弦巻さん:フィロ・ファーンズワースという世界初の完全電子式テレビを発明した人物の話です。幼少期から発明に目覚めて、天才的な頭脳で誰もがたどり着けなかったところを突破する。でも、大企業にその特許を奪われそうになり…という、実際にあった話をベースにしています。この作品はアーロン・ソーキンというアメリカの映画脚本家の大家が書いた脚本ですが、日本ではまだ未上演だった戯曲で、今回が国内初上演なんです。

堰八アナ:初上演だったんですか!

弦巻さん:2017年に亡くなってしまった青井陽治さんという僕の師匠ともいえる翻訳家・演出家の方が訳してくれて、僕に「面白かったら、いつかやってみて」と託してくれた作品です。台本を読んだ時、絶対に上演したいとは思ったんですが、とても難しいタイプの演劇で、当時は札幌にはこれできる役者はいないなって感じました。劇団の皆がもっと大人にならないと出せない、理解できない感覚がある台本だなと。それで7年間ずっと温めていました。 今は充分に役者が揃ったと思っています。

「ファーンズワース・インヴェンション」稽古場の風景

堰八アナ:青井さんが天国から舞台を見ていたら、何とおっしゃると思いますか?

弦巻さん:うーん、ニコニコしながら、細かいダメ出しをしてくれるかな(笑)

堰八アナ:そこはダメ出しなんですね(笑)

奪うか、奪われるかのぶつかり合いに注目。

堰八アナ:見どころについても…ネタバレしない範囲で教えてください

弦巻さん:性別を限定した言い方は今の時代に良くないとは思うんですけど、簡単に説明するなら「男同士のぶつかり合いのドラマ」です。舞台が約100年前のアメリカの男性社会、仕事への欲望とプライドが個人のアイデンティティーに直結した、奪うか、奪われるかの世界。自分が名を成さないとゼロになってしまう世界で生きる人間たちのぶつかり合いに注目して欲しいですね。 日本のドラマで例えるなら「半沢直樹」に近いでしょうか。

堰八アナ:アーロン・ソーキンは映画「ソーシャル・ネットワーク(※1)」の脚本でも有名な方ですよね

弦巻さん:僕らの世代では、彼の映画脚本デビュー作でもある「ア・フュー・グッドメン(※2)」が有名です。僕も高校1年生の時に見て影響を受けた作品の1つで、その人の脚本にこうやって取り組めるのは嬉しいなって。どちらの作品もアメリカが舞台の法廷劇で、先述の通り仕事に全てのアイデンティティーがある人たちの話なんです。その感覚が日本人にはなかなか掴みにくい。

(※1)「ソーシャル・ネットワーク」…2010年のアメリカ映画。デヴィット・フィンチャー監督作品。マーク・ザッカーバーグを主人公に「Facebook」の設立とその後の訴訟を描いている。
(※2)「ア・フュー・グッドメン」…1992年のアメリカ映画。アーロン・ソーキンによる同名の舞台が原作。トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアが出演。米軍の軍法会議を舞台にした法廷サスペンス。

堰八アナ:確かに…

弦巻さん:日本だと仕事で負けても「でも家庭が一番大事だよね、めでたしめでたし」ってなりますけど、アメリカの実力社会ではそうはならないんです。少しでも奪われたら全てを失ってしまう、命がけの戦い。舞台をつくる上で、俳優たちとその認識を共有しなきゃいけなかった点が苦労しました。

堰八アナ:役者の方々も魅力的ですよね

弦巻さん:僕の劇団でも、他の劇団でも主役を張っているほど実力のある役者たちが何人も出てくれています。みんな僕と10年ぐらい、長い人では15年ぐらい一緒にやってきて、翻訳劇へのアプローチや演技に求める点を一緒に積み上げて、言わば共通言語を持っている仲間たちです。彼、彼女たちの演技にもぜひ注目して欲しいですね。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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