まずはこの作品をご覧いただけただろうか。横26cm×縦28cm×奥行き27cmのサイズで「あのころの駄菓子屋」を再現したドールハウスである。全体の骨組み、棚や台などの什器、そこに置いてある駄菓子やおもちゃなど、すべてが細部にいたるまでつくり込まれ、あまりの精巧さにため息がもれる。
作者は函館出身のドールハウス作家・風音(かぜおと)さん。作家歴は9年、本業の仕事のかたわらプライベートをほぼドールハウスの制作に費やしてきた。新作を発表するごとに商品見本となる作品をつくってインスタグラムとホームページにアップ。それをカタログがわりとしてオーダーを受けるという流れだ。
これまで制作したのはトータル187台で、中でも一番オーダーが多かったのがこの駄菓子屋のドールハウス。「おそらく20台はつくったと思います。これは自分用につくったもので、モチーフは子どものころに通った近所の駄菓子屋さん。的場町の学校近くにあった店で、やさしいおばあちゃんがいたのを覚えています。とにかくアイテム(商品)数が多いので、そこが一番たいへんでした」
目を凝らして店内を覗くと、紐あめ、カステーラ、モロッコヨーグル、ミルキー、粉ジュース、ココアシガレット、カルミン、ペロタン、どんどん焼きなどのお菓子類に、ソフトグライダーや怪獣カードやおしゃれセットなどが、あのころと同じように並んでいる。まるで当時撮影した店内写真を見るかのようだ。
■【函館】光と影、今と昔が交錯する「朽ちていく美」の異世界。
道南の記事一覧:【道南のお気に入りを見つけたい】