このレストランの前身は、昭和の時代に現在の函館市役所そばにあった旧函館市労働会館内の食堂。かつての函館の洋食文化を語る際に必ず名前が挙がるほどの重要な場所で、以前弊誌が『ROKAN』を取材したとき「いまから50年くらい前は、来る人来る人みなハヤシライスを注文していた時代があったと聞いている」と店主が教えてくれた。
もちろん、当時の通称「ろうかん」を店名に冠した同店では現在でもハヤシライスがメニューに名を連ねている。この料理の生命線であり味を左右するデミグラスソースは1週間かけてじっくり煮込み、メイン具材も牛肉ではなくシーフード。しっかりと手間とコストがかかっており、家庭では到底再現できないプロの味だ。
飲食店のメニューからハヤシライスの名を見かけなくなって久しい。そのかわり家庭ではおなじみの料理なのかといえば、決してそうではない。その一方で、カレーライスは店でも家でもなくなる気配を一向に見せない。少し理不尽さを感じるのは編集部だけだろうか。いまこそもう一度、ハヤシライスに光を。
【レストラン ROKAN】
北海道函館市大森町2-14 サンリフレ函館1F
0138-22-6643
フルーツポンチ、チョコレートサンデー、そしてプリン・ア・ラ・モード(以降 プリンアラモード)。
昭和の時代に庶民が愛した「3大デザート」である。残念ながら、現在その3つはいずれも絶滅危機に瀕している。そんな背景を知ってか知らずか、ここ『パーラー花車』にはいまも当たり前のようにプリンアラモードがあり、依然として安定した人気を誇る。弊誌vol.123の特集でも紹介したが、こちらの店の出自には、昭和から平成にかけて五稜郭地区で一斉を風靡した喫茶店『SWEET PARLOR TOP'S(トップス)』が大きく絡んでいる。
函館では早くから多彩なパフェやクレープ、そしてプリンアラモードなどの甘味ものを前面に打ち出したこの店で、全盛期の昭和50年代半ばころに働いていたのが同店を営む畑中幸一さんと畑中くみさんの夫妻。特にくみさんは当時パフェづくりを担当していたこともあり、この時代のデザート類には人一倍愛着とこだわりがある。もちろん、このプリンアラモードも手づくりプリンに8種類のフルーツをふんだんに盛り込んだ「本気」の一品である。
【パーラー 花車】
北海道函館市花園町40-34
0138-55-8607
■【函館】光と影、今と昔が交錯する「朽ちていく美」の異世界。
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