2024.10.14

深める

「息子が好きになるのは男性だ」気づいた母は、なぜ偏見を持たなかったのか【忘れないよ、ありがとう③】

「ばあちゃん仲間」

この日は、ちかさんも出勤日。人を笑わせるのが好きなちかさんは、いつも個性的なメイクや衣装でお客さんを楽しませています。みゆきさんも、そんな息子の姿を笑って出迎えます。

てる子さんは、ちかさんときみちゃんふうふのほほえましいエピソードを話し出しました。

ちかさんのダイエットのために、優しいきみちゃんは野菜たっぷりの脂肪燃焼スープを作っていること。でもお腹がすいたちかさんは、スープだけでは足りずに、結局ピザやコーラを食べてしまうこと。

みゆきさんも、「きみちゃんは自分も仕事があるのに、毎日ちかのお弁当を作ってるんだって!」と楽しげに話します。2人がきみちゃんを褒めちぎるのを、ちかさんはうれしそうに聞いていました。

羅希ちゃんが生まれる予定日は、もう1か月ほど先に迫っていました。みゆきさんは、「これから育てていくにあたって、色んなことに向き合わなきゃいけない壁もあると思う」と言いながらも、「ばあちゃんとしては、見守っていきたいな」と力強く話しました。

てる子さんも「自分も、もう1人のばあちゃんとして」と、みゆきさんに少し頭を下げました。てる子さんは店のママとして、スタッフを子どものように思っているため、「ちかに子どもができるのは、孫ができるような気持ち」だといいます。

するとみゆきさんはてる子さんのほうを向き、きみちゃんのお母さんも含めた自分たちのことをこう言いました。「3人ばあちゃん」

てる子さんは一拍呼吸を置き、「ばあちゃん仲間ということでよろしくお願いします」と深く頭を下げました。

常連客も待つ、羅希ちゃんの誕生

常連客のくらんさんがやってきました。てる子さんの指示を受けながら、ちかさんがビールを準備します。

3年ほど前から店に通ってきたくらんさんも、ちかさんときみちゃんを近くで見守ってきたうちの1人です。

「友達ふうふが子どもを授かったんだということが純粋にうれしい!男どうしのふうふだからとか、きみちゃんがトランスジェンダーだからうれしいっていうのは、特にない」

「常連みんなが近所のお姉さんお兄さんみたいな感じ」「(ちかさんもきみちゃんも)お父さんであり優しいお母さんでありっていう印象だから、すごく面白い子育てになるんじゃないかな」

くらんさんの言葉を、ちかさんは噛みしめるように、うなずいて聞いていました。

今の社会では、ちかさんときみちゃん、羅希ちゃんがぶつかる壁は、多いのかもしれません。それでも、この日の取材で、3人には味方が多くいることがわかりました。その存在は、3人のこれからを照らす「希望」のようで、そんな人たちに支えられた3人は、社会の壁を打ち壊す「希望」となるように感じました。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

この記事のキーワードはこちら

SNSでシェアする

  • X
  • facebook
  • line

編集部ひと押し

あなたへおすすめ

エリアで記事を探す

FOLLOW US

  • X