2024.10.13
深める「…(抵抗感が)無いっていうか…想像がつかない…」
「妊娠・出産」は、こころが男性のきみちゃんにとって、望んだことではありながら、自分のからだが「女性」である現実を突きつけられる体験でもあります。
例えば健診では、「内診」を受けることも必要になります。内診とは、脚の部分が自動で開く診察台に下着を脱いだ状態で寝て、医師が直接指や器具で子宮の状態を確かめる、婦人科では大切な検査です。
わたしは女性のからだに生まれ、こころも女性と自認していますが、婦人科で内診を受けるときは、恥ずかしさやしんどさを感じることもあります。ましてこころは男性のきみちゃんなら、どうでしょう。
「自分で望んだ妊娠」だと話していたきみちゃんですが、からだが女性であるからこそ必要な検査や、どんどん膨らむ自分のおなかを受け入れられているのか?わたしは常に、心配な思いがありました。
しかし自宅に戻ると、きみちゃんが妊娠して感じているのは、不安だけではないことがわかりました。
「鼻がぺちゃってなって、ちかさんいわく、きみちゃんに似てるって」
きみちゃんは、母子手帳と、エコー写真を見せてくれました。赤ちゃんの顔を指さし、「きょうは正面を向いていた、恥ずかしがらなかったですね」と、この日初めてわたしに笑顔を見せました。
きみちゃんはつぶやきました。「…はやく、会いたいなって思います」
このときにカメラに見せたきみちゃんの笑顔は、わたしがこれまで見てきた中で、いちばんやさしい顔をしていました。
出産予定日は、2022年の1月24日。赤ちゃんに会えるまで、あと2か月と少しに迫っていました。