僕は8年ほど前、札幌に移住してすぐの頃から、キノマドの活動を手伝ってきました。初めての参加は市街地のとあるビル屋上での上映会。当時、スクリーンは木製で組み立てが必要なもので、やっとのことで組み上げた後、ふとした拍子に踏んで「バキィッ」っと破壊してしまい、とっても気まずい空気が流れたのを覚えています。
と、同時に「こんな上映の形があったのか」と感激しました。スクリーンの光を反射して見える観客の横顔の、真剣なまざなし。時々風に乗って聞こえる笑い声や、鼻をすする音(もちろん花粉症じゃなくて泣いていたのだと信じています)。
さらに屋上というロケーションに惹かれて来場してくれた方が多いのか、日ごろは映画館よりビーチが似合いそうなカップルや、さっきまで夜景を背景に自撮りをしていた女の子たちまでもが、皆さん一様に神妙な顔つきをしている訳です。ちょっと不思議な光景でした。
上映を終えると、代表の田口亮さんが映画の解説をします。これが毎回、思わず「そんな視点があったのか」と言いたくなるお話です。誰しも映画を観た後、どこかで「何だったんだろう」「どうゆう意味?」という「モヤモヤ」を感じたことがあると思いますが(もちろん、見方はそれぞれで「答え」はないのですが)、そこに1つのヒントを与えてくれるのです。
終わった後は、残って上映スタッフに話しかけてくれる人もいれば、外を眺めながら余韻にひたっている方もいます。感慨深い表情を浮かべ、小さな声で「ありがとうございました」と去って行く人々。僕の思い込みかもしれませんが、どこか来た時とは顔の印象が異なって見えたんです。
きっと参加した方々に何か、いい影響を与えられたはず。そう思い夢中で活動して、気付けば8年が経っていました。
僕自身もかつて映画にたくさん救ってもらった経験があるからこそ、多くの人に体感して欲しい。おこがましいようですが、この気持ちが、長らくお手伝いしている大きな理由です。