2024.08.04
深める「中学生の頃には、すでに足のサイズが25cmくらいあって、メンズのスニーカーやサラリーマン用のローファーなんかを履いていました。女性もののコーナーには、自分に合うサイズがないので、買い物に行くのも嫌で」と、振り返る鈴木さん。
高校生になり、誰もがお洒落に目覚める年頃になると、大きな足へのコンプレックスはますます大きくなりました。いくら服装でお洒落をしても、足元はスニーカー。ガーリーな服を着たい年頃でも似合う靴がなく、諦めるしかなかったそう。
「大学時代には、男女のグループでボウリングに行くと、シューズをレンタルするときにサイズをみんなに知られるのが恥ずかしくて、無理して『24.5cmで』とか言ってました。もう足が痛くて痛くて、ボウリングを楽しむどころではありませんでした」と、今では笑い飛ばす鈴木さんですが、当時は大きな悩みでした。
そんな鈴木さんは、会社員として勤めていた時にSEVEN AND A HALFと出会います。
広告を見て、ショップを訪ねると、オーナーとして店頭に立っていたのは高校時代の同級生でした。サイズに不自由することなく足元のお洒落が楽しめる靴と出会い、すっかりお店のファンになったといいます。
その後、結婚を機に仕事を辞め、二人の娘さんにも恵まれましたが、30歳を過ぎた頃に離婚。シングルマザーとして娘さんたちを育てることに。
当時、SEVEN AND A HALFのオーナーが海外での買い付けで不在にする際は、友だちのよしみで鈴木さんがショップに立つこともありました。そして2009年、正式にパートスタッフとして採用。以来、お客様の悩みに寄り添いながら接客し、信頼を築いて行きます。
「自分自身が靴で痛い思いをたくさんしてきたので、お客様には靴で笑顔になってほしいんです」と話す鈴木さん。たとえお客様が気に入った靴でも、足に合わないと判断したときは、しっかりとマイナス部分を伝え、ぴったり合った靴をお薦めするように心がけてきました。
「せっかくなら、ずっと長く履いていただきたいので」。そんな心のこもった接客を続けるうちに「鈴木さんに靴を選んでもらえて良かった」と、ショップに通い続けるお客様も。
そして、パートスタッフとして働き始めて10年が経った頃、鈴木さんに転機が訪れます。
「この店を継いでくれない?」
2019年、海外移住を決めた前オーナーから、こんな言葉をかけられました。
「正直、経営者になる自信がなくて悩みました」。鈴木さんは当時を振り返ります。