2021.09.02

育む

ママに喜んでほしくてピンク 本当は青がほしかった 【親の心、子知らず。子の心、親知らず。#2】

自分はどんな性別か。どんな人が好きか。マイノリティの話ではなく、誰もが持つ「個性」の話として、みんなに知ってほしいと、トランスジェンダーの息子とその母親が、交代で心の中を語る連載「親の心、子知らず。子の心、親知らず」。

第2回の今回は、息子が性別の違和感と、母への想いについて話します。
▷第1回目「母親」が書いた記事:息子を女の子として育てた母

「自己紹介で性別いる?!」

皆さんこんにちは!今回は私の初めての記事になりますので、自己紹介から書いていこうと思います。

高橋愛美といいます。教員を目指しています。スポーツが大好きで、小学校から高校まではサッカー、大学ではラクロスをやっていました。今は大学院で研究するかたわら、ラクロス部のコーチをしています。

性別は?というと、「名前の字からすると女性でしょ」と思った方、半分、いや、2割正解です!笑

詳しく説明すると、与えられた性別・身体的な性別に違和感を持っています。戸籍上の性別、身体的な性別は女性なのですが、小さいころから男性として生きていきたいと感じていました。今はできる範囲で男性として生活しています。

名前の読み方は愛美で「まさはる」と読みます。生まれたときにつけてもらった名前は「まなみ」という読み方でした。2か月くらい前に、漢字はそのままで読み方のみ、「まなみ」から「まさはる」に変更しました。

性別の説明ながっっ!!っていうか、自己紹介で性別いる!?と思った方、いますよね。私もそう思います(笑)私の場合、性別を説明しないとさまざまな「困りごと」が発生してしまうので、必要に応じてすることがありますが、ほとんどの方は、自己紹介で性別をわざわざ紹介したりしませんよね。

でもそれって、見た目や行動で男女二択のどちらかを言い当てればいいように、私たちの生活が整備されてきたからなんです。初対面の人に会ったとき、服装はメンズかレディースか。声は女性的か男性的か。名前は女性的か男性的か。大体こんなところを総合的に見ながら、「この人は女性だな」「この人は男性だな」と認識していますよね。私もそうです。

ですが私は、それだけの情報では完全に相手の性別を決定することはありません。なぜなら性別は、他人が見た目やふるまいを観察しただけで決められるほど簡単なものではないからです。そして性別は、他者ではなく、自分で決定するものであると考えるからです。

さて、自己紹介はこの辺にして…そろそろ本題に入っていきたいと思います。

女の子は「かわいい」とほめれば満足?

いわゆるトランスジェンダーといわれる方々の中でも、「性別の違和感を持ち始めた時期」には個人差があります。私の場合は、物心ついたときからでした。

男性器は後から生えてくると思っていましたし、「かっこいいね!」「力持ちだね!」と言われると、「自分が男の子として認められた」と感じられて、とても気分が良かったです。

母親も、この子は「かわいい」より「かっこいい」と言われるほうが嬉しいんだな、と気づいていたと思います。大体の大人たちは、「女の子はかわいいとほめれば満足する」と思っていますなんせ普段言われない貴重な言葉だったので、「かっこいい」という言葉へのテンションの上がりようが半端じゃなかったと思います。笑

「かっこいいね」と言われるように、「かわいいね」と言われないように、という基準で行動を選びました。かと思えば、時にはボーイッシュな女の子の枠を超えないように、親を悲しませないように、バランスをとってわざと女の子らしい振る舞いをしました。

母は、私に「どちらかというとあなたのやりたいことをやらせてきた」と言います。確かにそうです。どうしてもスカートをはきたくないといえば無理にはかせることはありませんでしたし、私がかっこいいと言われて嬉しいことも知っていました。

でも私から言わせてもらえば、「やりたいことをやらせてきた」のではなく、「やりたいと言ったことをやらせてきた」に過ぎないのです。

やりたいことをやりたいと言えないことが問題なのです。

「女の子なのにどうしてパパみたいな歩き方するの!だらしないからやめなさい」「どうして俺っていうの?」「それは男の子が選ぶものでしょ」「髪は長いほうが可愛いよ」
私を女の子として育てました。親以外の大人も、同じように育てました。

「どうせ、ほしいものは買ってもらえない」「どうせ、したいふるまいはさせてもらえない」と、自分の想いとは違う行動を、自分からするようになっていきました。「どうせ青いランドセルなんか買ってもらえないよな。ピンクのランドセルかわいいってママ言ってたし、これを選んだら喜んでもらえるかな」てな感じで。

最初は思い通りにいかなくても、親が喜んでいてくれさえすれば、それでよかったんです。それで私も嬉しかったんです。しかし、次第に成長し、自我が確立されていく中で、大好きだった親を心のどこかで憎むようになりました。

「俺のことなんて誰もわからないんだ」「好きなものをみんなは買ってもらえるのに、どうして俺だけ買ってほしいと言うこともできないんだ」「本当はこんな格好したくないのに…」「全く俺のことなんかわかってないくせに何でもかんでも口出ししてきやがって…」

誰も悪くないんです。だって、お互いに思いあっていたのだから。母は一生懸命に子育てをしていたのだから。ただ、与えられた性別に違和感を持つ人がいることを「知らなかった」だけなのだから。

でも、たったそれだけのことで、私は親を信じられなくなり、人を信じられなくなりました。

あら、暗―い感じで終わっちゃいそうですね~。でも、今回は文字数も文字数なので、ここで終わりということにします(笑)こんな感じでまあまあ最悪なスタートを切った親子関係ですが、今後どのように変わっていくのでしょうか。次回もお楽しみに!

文:高橋愛美(たかはし・まさはる)
トランスジェンダーとして生まれ、性別に配慮のある教員を目指して大学院で勉強中。母親の高橋愛紀はSOGI-Mamii'sを立ち上げ、「SOGI」という概念を広めるべく活動中

編集:Sitakke編集部 IKU

※SOGIとは、Sexual Orientation・Gender Identityの頭文字で、性的指向/性自認のことを言います。
「LGBT」がレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーという‘誰’を指すのに対して、「SOGI」はどんな性別を好きになるのか?自分自身をどういう性だと認識しているのかという‘状態’を指す概念で、LGBTに限らない、全ての人が含まれる考え方です。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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