2024.04.10
出かける4月6日(土)から、神奈川県を拠点に活動する画家・遠藤彰子の作品展「遠藤彰子展 生生流転」が、札幌芸術の森美術館で開催されています。
1947年東京都生まれ、神奈川県在住。1969年、武蔵野美術短期大学卒業。1986年、安井賞受賞。同年、文化庁芸術家在外派遣研修(インド)。2007年、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、紫綬褒章受章。2023年、毎日芸術賞受賞。
今回は開幕前の美術館にお邪魔し、「美術展がどう出来上がるのか」を見せてもらいました!
開幕に向けて会場設営が始まったのは、3月27日。
この日は何もない展示室に、作品を取り付ける「壁」を設置する作業からスタートです。
ウィーン!ウィーン!
早速会場に入ると、インパクトドライバーで何かを作る音が聞こえてきました。
「今まさに壁を作っていたんです。立てると高さが4.2mになります」
教えてくれたのは、施工を担当するSTUDIO ZERO株式会社の担当者さん。
札幌を中心に、美術展や展覧会の会場施工を多くこなすプロフェッショナル集団です。
それにしても、4.2mの壁が職人さんによる手作りとは…驚きを隠せません。
「美術館に元々ある“可動壁”とそれぞれの展覧会に合わせて制作する“造作壁”を組み合わせて、展示室のレイアウトを作っていきます。
造作壁は、横0.9m、縦1.8mのパネルを組み合わせて、それぞれの場所に合うよう、ちょうどいいサイズに作るんです」
今まで気にしていませんでしたが、確かに札幌芸術の森美術館は来るたびに会場のレイアウトが違います!
「レイアウトも展覧会ごとに作品をどう見せるのか、どうすれば作品の意図が伝わるのか…など学芸員さんが考えて構成、図面化します。我々は図面を具現化する一歩目の仕事ですね」
出来上がった壁がこちら。
「壁」といっても、一般的にイメージするような薄さだと、安定して自立させられません。
展覧会の“壁”は、作品を取り付ける際、ビスを打ち込んだりすることもあるため、
パネルを4面組み合わせ、巨大な“箱”を製作。そうして出来上がったものを設置することで、「展示壁」となります。
実はこの壁の中にも秘密が…。
「設置場所にもよりますが、壁の中は工事現場で見るような“足場”を組んでいて、さらに重りをセットします。何があっても絶対に倒れないよう、当然ですが、安全にも配慮して造っていきます」
そうして設置された“造作壁”に、表具工事(パネルの木目を隠すよう、壁紙を貼る作業)を行ってきれいな白壁が完成します。
「表具貼りも、そのまま貼ってしまうと木目の段差が出てしまうので
まず先に木目にパテを塗り込み、限りなく段差が出ないようにするんです。
作品を展示する壁が汚いと、お客様が見ている時に気が散ってしまいますから」
“壁をつくる”という一見単純な仕事の中に、いくつもの職人技とこだわりが…!
プロの仕事に脱帽です。
今回の展覧会では75点の作品を展示します。
「じゃあそっち持っていきましょう」「ゆっくりでいいよー」
展示される遠藤彰子氏の作品約80点の中には、1枚で500号(約2.5m×3.3m)という巨大画も多くあります。
作業員の皆さんは、声を掛け合いながら、一作品に対し2人一組を基本フォーメーションとして、作品を持ち上げ、展示室へ搬入します。
展示室に搬入された作品は、事前につくられた平面図(壁の立て方や作品の位置を示す図面)に合わせて、設置場所付近に配置していきます。
配置後、作品それぞれのコンディションチェック(※輸送中に破損などがないかを確認する作業)を行い、作品の状態を確認。
問題がないことをしっかりと確認してから、いよいよ壁に作品を取り付ける作業に入っていきます。
■次回予告:いよいよ作品を取り付け!巨大画はどのようにして壁に取り付けられるのか!?
今回は作品を展示する“前段階”の裏側をご紹介しました!
作品を展示する壁にも、いろんなこだわりがありました。
作品はもちろん、来場される際は展示方法や作品がかかっている壁、展示室のレイアウトに注目するのも面白いかもしれません。
次回は最大幅約7.5mにも及ぶ巨大画は一体どうやって展示するのか?
展示の裏側をお伝えします。
【展覧会概要】
展覧会名:遠藤彰子展 生生流転
会期:開催中~6 月 16 日(日)まで
休館日: 4 月 15 日(月)、4 月 22 日(月)
会場:札幌芸術の森美術館(〒005-0864 札幌市南区芸術の森 2 丁目 75 番地)
入場料などの詳細は公式HPをご確認ください。
⇒https://www.hbc.co.jp/event/endoakiko/
※2024年4月掲載時の情報です。
文:Sitakke編集部
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