2024.04.04
深める→前回【第4話】最期は誰が看取る? ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第4話)ホームレスを支援する元ホームレス・その2
対応能力の高さに魅かれて…
「路上生活を脱するには、金銭的な支援や就労支援をしたら、すぐにできるかというと、そうではないんです」
よどみない日本語で、明るく、丁寧に話す阿木爾(アムエル)さん(23歳)は、中国内モンゴル自治区出身の留学生です。
任意のボランティア団体「北海道の労働と福祉を考える会(通称・労福会)(*注1)」のメンバーとして、おととし10月から路上生活者ら生活困窮者の支援に携わり、この1年、会の事務局長として活動を束ねて来ました。
きっかけは、大学のサークルの先輩から「ホームレスの人たちへの支援で、今度、炊き出しがあるんだけど、手伝ってくれないか?」という誘いでした。
初めて参加した炊き出しで、アムエルさんが印象に残ったのは、食事や衣類などを求めて来場した生活困窮者の様子よりも、労福会のメンバーが困窮者のトラブルに対応した問題解決の能力の高さでした。
その日、100人近くの来場者があった会場で、こんなことがあったそうです。衣類を配布するに当たってその順番を決める抽選くじで、順番が来た人を呼ぶ際、うまく伝わらず、そのことがきっかけで、「早くしろ!」「今呼ばれたのは誰だ?」などと怒号が飛び交い、会場が殺気立ちました。アムエルさんはその順番を伝える係をまさに担当していて、縮み上がるような思いをしていたところ、会のメンバーが、声を荒げる来場者の元に飛んで行き、なだめ、話を聞き、不手際があったことなど問題点を即座に整理して、再び衣類の配布を始めました。
「すごかったんです、その雰囲気は…。でも、メンバーのみなさんが理路整然と対応して、問題を解決したんです」
「トラブルの時に問題を解決する力が、すごいと思ったんです」
「これは後から知ったのですが、一朝一夕でできることではなく、対応したメンバーは声を荒げた人たちをよく知っていて、話ができる関係にあったから、そういう対応ができたんです」
この出来事をきっかけにアムエルさんは、毎週土曜日の夜回り(*注2)に通うようになり、自分の対人関係の能力を高めたいと思うようになりました。
→前回【第4話】最期は誰が看取る? ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第4話)ホームレスを支援する元ホームレス・その2
【第1話】さむないよ。家はない ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第1話)ホームレスもハウスレスも経て…(1)
【第2話】怖くて怖くて。 ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第2話)ホームレスもハウスレスも経て…(2)