ファッションショーのモデルとしてイタリア・ミラノを訪れた葦原さん。
現地で地下鉄に乗る機会がありました。
ふだん、日本で地下鉄に乗るときには、乗り降りの援助の手配や駅員さんとのやり取りなどの手間が多く、それだけで、数本乗り遅れてしまうことも多いのだといいます。
だからこそ、ずっと思ってきたのが 「自分一人で、乗り降りができたらいいのに」 ということ。
一方のイタリア。
駅の構内は段差が少なく、自由に操作できる昇降機も整備され、日本よりも障害者がひとりでも移動しやすい構造になっていたそうです。
これは設備の面で「便利!」と感じたといいますが…。
その一方で、別な思いも頭をよぎったといいます。
「やってもらえる方が、ありがたかったかも…」
葦原さんのような外国人にとっては、イタリア語で掲示された説明文は理解できず、昇降機はどう使えばいいのか、そもそも自由に乗り降りしていいのか、わからなかったといいます。
ひとりで自由に移動できる反面、外国人などルールや習慣に不慣れな人にとっては、ぽつんと取り残される不安を感じてしまうかも知れません。
葦原さんは、さまざまな場面で 「心のバリアフリー」 という言葉を使っています。
日本でも設備のバリアフリー化はどんどん進んでいます。
それでも、“あの車いすの人、大丈夫かな?”と見守ったり、困っていそうなときは積極的に声をかけたり…。
心を通わせた手助け は、より大切にしていかなければと、葦原さんのお話を聞いて思いました。
トークショーの後は、サイン会。
葦原さんは並んだ一人一人と丁寧に、そしてとっても明るく言葉を交わしていきます。
初出版のエッセイですから、目の前の多くの人は初対面のはず。
でもそれをまったく感じさせないほどのフランクな雰囲気で相手の緊張をほぐし、心の距離をあっという間に縮めてしまいます。
まさに「心のバリアフリー」!
葦原さんの愛される理由であり、魅力です。
サインの順番を待っている人には「時間かかりそう、ごめんね!」「でも、一人一人とちゃんと話したいから!」と合間合間に声をかけます。
約50人との触れ合いは、2時間半ほどに渡りました。
葦原さんの顔に疲れはまったく見えないどころか、むしろエネルギーがチャージされたように、私には見えました。
イベントを終えた葦原さんに、私は話を聞きに行きました。
この日の葦原さんは、フリルのついたギンガムチェックのブラウスに身を包み、左右に高くまとめたヘアスタイルで、よく似合っていました。
自分の「好き」という気持ちに正直で、自信にみなぎる姿は、とても輝いていました。
私が印象的だと思ったのは、イベントでの葦原さんのファンに対しての声かけです。
■「こころが男性どうし」で結婚、そして妊娠。2人の姿が教えてくれた、“性別に関係のない”感情