2023.10.02
暮らす「天気を味方にすると、暮らしはもっと快適になる!」をテーマに、毎日の生活に役立つお天気情報の”見方”を気象予報士がお伝えします。
今年の夏(6~8月)の日本の平均気温は、1898年以降で最も高くなりました。
この記録的な猛暑により、これからの台風シーズンに大きな影響を及ぼすおそれがあります。台風の知識を身に付け、防災につなげるヒントとなれば幸いです。
台風とは何でしょう。赤道付近など熱帯の海上でできた低気圧を「熱帯低気圧」と呼び、低気圧域内の最大風速がおよそ17メートル以上に発達すると「台風」と名前が変わります。
ちなみに、台風は日本近海での呼び方ですが、アメリカ大陸周辺では「ハリケーン」。インド洋周辺では「サイクロン」と呼び方が変わります。
気象庁では毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、年間平均で約25個発生します。
「台風」は暖かい海面から供給される水蒸気をエネルギー源として発達するため、水蒸気を多く含んだ暖かい空気だけでできています。
海面水温が熱帯よりも低い日本付近に来ると、海からの水蒸気の供給が減少するとともに、上空の寒気の影響を受けるようになります。
すると、暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合い、「前線」ができます。「温帯低気圧」はこの温度差をエネルギー源としています。台風と温帯低気圧とでは構造や性質が異なるのです。
「台風は温帯低気圧に変わりました」と聞くと、もう雨や風は弱まったと思われがちですが、油断してはいけません。
むしろ強い風の範囲が広がるため、低気圧から離れたところでも被害が発生したり、温帯低気圧として再び発達して、さらに風が強まったりすることがあります。
平成16年(2004年)の台風18号は、北海道の西海上で温帯低気圧に変わったあと再び発達し、札幌では観測史上最も強い、最大瞬間風速50.2メートルを観測しました。この台風では、札幌市内でも街路樹が倒れる被害が相次ぎ、北大構内ではポプラ並木が多く倒れたことから、「ポプラ台風」とも呼ばれています。
これからは台風シーズンに入ります。
台風は自力で動くことができず、上空の風に流されて高気圧の周りを回るように、日本へ放物線を描くようにして北上します。真夏は夏の太平洋高気圧が日本を覆っているため北上できず、大陸へ進んだり、南海上でウロウロしたりすることが多いですが、秋になり高気圧の勢力が弱まると、北へ進む道ができ、日本へ近づくようになるのです。
ここで、今年の記録的な猛暑と台風はどのように関係するのでしょうか。
今年の夏(6~8月)の日本の平均気温は、1898年以降で最も高くなりました。北海道でも平均気温が平年より3℃も高く、史上最も暑くなりました。
猛暑の原因は、夏の高気圧(太平洋高気圧)の張り出しが記録的に強かったことに加え、温暖化に伴う地球全体の高温傾向、北日本を中心とした海水温の顕著な高温状態が影響した可能性も考えられます。
台風は暖かい海面から供給される水蒸気をエネルギー源として発達するので、海水温の高い状態は、台風を発達させる大きな要因になるのです。この先も海水温が高めの状態が続くと予想されるため、この秋は勢力の強い台風が北海道にも近づくおそれがあります。
台風や前線などの影響で、秋は雨が多い季節です。改めて、非常食の消費期限の確認や、懐中電灯の電池が切れていないかなど防災グッズの確認をしておきましょう。雨の見通しなど、天気予報のチェックもお忘れなく。
<PROFILE>
文・イラスト: HBCウェザーセンター 気象予報士 児玉晃
HBCテレビ「今日ドキッ!」の番組内でも独特(?)なイラストを使って天気をお伝えしています。HBCウェザーセンターのインスタグラムも開設!予報士のゆる~い日常も見られますよ。