札幌市の円山動物園では今、オランウータンが暮らすための新しい施設の工事が大詰めを迎えています。
HBCが特別に潜入したその内部は、職人ワザが光っていました。
30度を超える暑さの中、器用に水で顔を洗うのは、オランウータンのお母さん・レンボーです。
李泳斉飼育員は、3歳になったレンボーの息子・レイトの手を取って、「ほとんど私と同じくらいの大きさです」と紹介してくれました。
8月10日、週に1度程度開かれる飼育員のガイドを聞きに15人が来園しました。
レイトは遊んでほしいのか、お客さんに時折つばを吹きかけます。
2頭は今、動物園の非公開エリアに仮住まい中。
来園者の前に姿を見せるのはこの飼育員ガイドの時だけです。
今は「新居」の完成を待っています。
その場所に李さんの期待も膨らんでいます。
「レイトが思う存分、私たちの想像を超えるくらいの速さでいろんな動きをしてくれるのを早く見たいんです」
大詰めを迎えている新しい「オランウータン館」の工事。
5月に続き、今回もHBCのカメラだけが内部の撮影を許されました。
▼5月の「初潜入」がこちら。高さ8メートル地点から細かな作業がスタート!スコールも再現!?おどろきの仕掛け
中に入ってまず驚くのは、その高さ!
まっすぐに伸びる木は8メートルに達しますが、実はコンクリートの上から職人が何層にも塗装を重ねた「レプリカ」です。
光が差し込む南側と陰になる北側で木の色や苔の雰囲気まで細かく再現。
岩のレプリカひとつとってもモルタルを吹きつけたり、細かく削ったりと職人技が光ります。
岡三リビックの大川浩次長が、職人と一緒に一番大事にしてきたことは「ボルネオのイメージを共通の認識で作り上げていくこと」だといいます。
オランウータンを「みる」のではなく、ふるさと・東南アジアのボルネオの森をまるごと「体感」してもらう施設に。
そのために、動物園と施工業者では150回以上やり取りを重ねながら「模型」を作りあげ、その徹底したコンセプトを全員で共有しました。
実はこの「模型」がとっても大事なのだと、岡三リビックのデザイナー、椎木絢菜さんが教えてくれました。
「どうしても岩や木のレプリカというのは図面上の細かい寸法では表現しきれない部分がある。模型がすべてなんです」
光が差し込む岩場は完成すると、水が流れ滝のようになる予定です。
この滝の仕組みひとつ作るのも大変な作業。
コンクリートで作られた真四角の壁を、いかに「崩し」、「模型に近づけるか」。
滝がキレイに流れるように、何度も水を実際に流しながら高さを1ミリ単位でそろえたといいます。
また、リアルでありながらももうひとつ大事なのが安全性。
レイトやレンボーがけがをしないように、岩場はごつごつしているように見えて滑らかになっていたり、木の節もとがらないように細心の注意がはらわれているんです。
一歩足を踏み入れれば、そこはレイトとレンボーのふるさと、東南アジアの森…。
その実現のために、広さ1300平方メートルの空間ひとつひとつに、とっても繊細な技術が結集しています。
2頭も引っ越しの日をきっと心待ちにしているオランウータン館。
10月末に完成し、2024年3月に一般公開の予定です。
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年8月10日)の情報に基づきます。
■【カメラ初潜入!】札幌・円山動物園の“世界最大級”の新施設「オランウータン館」のこだわり