2023.06.07
深める小さな命を諦めない。
救急から終末期ケアまで、子どもの命を守る最前線です。
連載「じぶんごとニュース」
おととし誕生した、手稲渓仁会病院「こども救命センター」。
子どもたちの「後遺症なき救命」を目指し、救急医療や、集中治療、さらには終末期のケアまで。
24時間、365日、道内では受け皿が少ない、重篤な容態の子どもを積極的に受け入れています。
「北海道に住んでるから諦めなければいけない命があるってのは、これは絶対あってはいけないことだと思う」
こう語るのは小児集中治療医の和田宗一郎医師です。
小児救命救急の拠点を目指すにあたって、北海道ならではの壁があるといいます。
「一般的には、患者を一つの病院に集めてたくさん見た方が成績もいいし、患者さんも助かるということがわかっているが、この広い北海道でそれをやるには搬送であったり、地域の病院とか施設の協力が、必ず必要になってくるという難しさがあります」
和田医師が重要視する子どもの「搬送」。
手稲渓仁会病院が強みとするドクターヘリに加えて、より安全な搬送手段に力を注いでいます。
「迎え搬送」で使っている救急車は、天井が普通の救急車より少し高く、「患者の調子が悪くなったときにも余裕をもって作業するスペースがある」といいます。
「迎え搬送」とは、「こども救命センター」独自の仕組みです。
救急車とセットで、医師と看護師が患者を迎えに行くことで、地方の病院に負担をかけない狙いです。
和田医師は、「対応に慣れていない先生が、怖い思いをしながら運ばなければいけないことが多々あった。搬送経験が十分ある医師が搬送を担うほうが、予後がいいということが国内でも報告が出ている」と話します。
「こども救命センター」が対応するのは、救急患者だけではありません。
入院している10歳の女の子。
脳に難病を抱えていて、4年前から入退院を繰り返しています。
母親は、「手術して1か月後に入学式で、みんなに協力してもらって行ったね、先生とICUで遊んでたもんね」と振り返ります。
和田医師は、「大変なことも今まであったけど、笑ってくれるとよかったなって思いますよね」と話します。
ドクターヘリで幼児が搬送されてきました。
「車がスリップして正面衝突」「後部座席にいた幼児の意識がもうろうとしている」という一報です。
痛みをうまく伝えられない幼児に対して、隠れている傷や潜んでいる症状がないか、くまなくチェックしていきます。
幸い、幼児に外傷や臓器の損傷はなく、翌日、退院することができました。
集中治療を専門とする和田医師は、外来を担当する日も。
診察に訪れたのは、生後7か月の赤ちゃんです。
半年前、RSウィルス感染症で緊急搬送。一時、ICUに入院していました。
和田医師は、「人工呼吸していた時期の影響がないか確認しているが、今のところかぜはひいてるけど、呼吸に大きな影響はなさそうなので、ひと安心」と話していました。
赤ちゃんの父親は、「かぜひいたときも、すぐに連れてきてと言ってくれているので、すごく安心できる」と話します。
そしてまた、救急車が病院にやってきました。
和田医師は、「命は助かった、ただその後、例えば障害を残したとか、学校や普段の生活に戻るのに何かハードルがある患者さんに対しては、病室から家に帰るまで、その全部をパッケージとして提供していくことを、我々のセンターでは心がけている」と話します。
手稲渓仁会病院の「こども救命センター」の優れた機能を全道で享受するためには、次の2点がカギになります。
「道内各地の病院との連携」と地方に負担をかけず、「搬送」を早く・安全に、です。
和田医師は、「一日も早く子どもの命の地域差をなくしたい」と話しています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年5月9日)の情報に基づきます。
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