2023.06.06
ゆるむ札幌の円山動物園で建設が進む地上8メートル以上の新施設。工事が進む内部にHBCのカメラが初めて入りました。
やんちゃ盛りのオランウータン、レイト。
母親のレンボーとともに円山動物園の病院に仮住まいをしています。
以前暮らしていた類人猿館が築40年以上となり、新たな施設を建てることになったからです。
建設中のオランウータン館は屋内施設としては世界最大級。
その工事中の内部に、HBCのカメラが初めて入りました。
案内してもらったのは地上6メートル~8メートルの地点。ちょうど、完成したらオランウータンが主に過ごす高さです。
37本ある柱は、本物そっくりの木に見せるためコンクリートの上から何層も塗装を重ねたり、削ったりしながら加工をして仕上げていきます。
足場を少しずつ崩しながら下へ下へと作り上げます。
節のごつごつした感じや皮がはがれた色合いまで1本1本、風合いが再現されています。
実際に触ってみても、木そのものに感じられるほど!まさに職人技です。
柱一つにまでこだわるのは、徹底されたコンセプトがあるからです。
札幌市円山動物園でオランウータンを担当する、李泳斉飼育員は、「オランウータンの住むボルネオの熱帯雨林を再現して来園者に『体感』してもらいたい」と話します。
オランウータンをただ見るのではなく、オランウータンが暮らす環境に来園者をいざなう。
柱は故郷の森を再現する重要なパーツなのです。
柱の周りには本物の熱帯の植物が植えられる予定で、育成用のライトも完備されています。
札幌市円山動物園・経営管理課の鈴鹿新平係長は、「魚やカメ、爬虫類、昆虫類も一緒に飼育することを計画しています」と話します。
さらに、こんな仕掛けも…
このノズルは、雨が降るような降雨装置。
オランウータンの過ごすエリアだけでなく、来園者の観覧スペースまで延びているんです。
「来園者に傘を渡して、スコールを体感してもらうという話も出ている」といいます。
オランウータン館の完成まで約2年半、狭い動物病院で暮らすことになるレンボーとレイト。
特にこれまで乗り越えてきた2回の冬は、外にも出られず、ストレスがたまるため、2頭にとって試練だったといいます。
寝床である、木でできたベッドを壊してしまったことも…。
李飼育員は「『これでは足りないよ』って発信してくれていた。動物に教えてもらいながら補っていった」と話します。
もう一度、刺激や変化を与えられるよう、おもちゃやしかけを工夫するとそのような行動はなくなり、今は引っ越してきて一番元気な状態になっています。
3歳になったレイトは、レンボーと一緒に、飼育員の健康チェックも受けられるようになりました。
「お母さんのマネをしながら、少しずつその先に治療があるんだという認識が芽生えてきている」と李飼育員は話します。
ただ、途中であきて遊びだしてしまうことも…
レンボーがレイトを連れてきて、飼育員の手助けまでしてくれます。
一方でレイトは、大人のオスが自分を誇示するための声「ロングコール」を練習しはじめるなど、ぐんぐん成長しています。
オランウータン担当の李泳斉飼育員は、「4~5歳のオランウータンは目にもとまらぬ速さで8メートルくらいの空間を渡っていく。レイトがそれくらいの時期に新しい獣舎に入るので本当によかった。ここで2年半頑張ってくれたのが報われる」と話します。
東南アジアの森を再現したオランウータン館は、10月末の完成です。
一般公開は来年3月の見込みで、新居で暮らすレイトとレンボーに会うことができます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年5月25日)の情報に基づきます。
■ 「ゾウも鼻毛はありますか?」動物園の飼育員が鼻の中をのぞくと?楽しく学ぶ、新たな試み
■【草食or肉食?】飼育員さんが教えてくれた、北海道のシンボル“ヒグマ”の意外なギャップとは
■連載円山動物園さんぽ