開幕をあす30日に控え、盛り上がる北広島。
「世界がまだ見ぬボールパーク」に期待しながらも、札幌のベットタウンとして開発が進んだ「静かな街」がどう変わるのかと、不安を口にする市民も少なくありません。
北広島市民の視点から、新球場開業で変わる街を取材しました。
新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」では、14日からオープン戦が始まり、これまでに7試合が行われました。
3月9日の、JR北広島駅から球場に向かう自転車歩行者専用道路です。
散歩コースとして住民に親しまれていますが、日中は人もまばらです。
ところが…
午後6時からオープン戦が行われた24日、遊歩道は球場に向かう観客であふれました。
「大移動」を目の当たりにした北広島市民からは、こんな声が。
「車の渋滞が、ちょうど買い物の時間帯になるのでどうなるのか心配」
「車が停めづらくなった。駐車場が無料だったのが、試合がある日は4~5000円とられるようで困っています」
JR北広島駅周辺では、観戦客の利用を見込み、値上げや有料化する駐車場が増えたといいます。
それでも、午後6時から試合が始まったこの日、駅前の有料駐車場は午後4時にはほぼ満車になりました。
北広島市民の山田篤秀さんには気がかりなことがあります。
ごみのポイ捨てです。
観客が移動したあとの歩道をチェックすると…
駅から100メートルほど歩きましたが、たばこの吸い殻が1つ落ちているだけでした。
山田さんは、「ただ、今のうちだけという気持ちもある。慣れてきて回数が増えていくと、そのうちポイ捨てしてもいいという雰囲気になるのが怖いが、北広島が発展していくのに凄く大事な場所。ものすごく楽しみです」と話していました。
北広島市の特産品「赤毛米(あかげまい)」の商品披露会に満面の笑顔で現れたのは、上野正三市長です。
北海道を代表する米「ゆめぴりか」や「ななつぼし」は、赤毛米の子孫です。
去年、北海道遺産に認定され、市が普及促進に取り組んでいます。
上野市長は、「ボールパークの開業を機会に、市内の周遊や巡りを計画していきたい」と話していました。
新球場の開業を好機ととらえ、埋もれた名物・名所をPRしようとする動きが活発化しています。
村井明さんは、国の指定史跡「旧島松駅逓所(えきていしょ)」の管理人です。
新球場開業による観光客の増加を見込んで、観光ガイドができる管理人の育成を急いでいます。
駅逓所は、道路や鉄道が整備されていなかった江戸時代に、荷物や人を運ぶ中継場所として設置された駅舎です。
現存する駅逓所としては道内最古のもので、1984年に国の史跡に指定されました。
「Boys, be ambitious = 青年よ、大志を抱け」。
1877年、札幌農学校の教頭の任期を終えたクラーク博士が、この駅逓所で、見送りに来た教え子らに残した名言です。
村井さんは、「帰るときにここで、馬に乗ってBoys, be ambitiousと言った。地元の人でさえ良く知らなかった。残念ながら」と話します。
駅逓所は、「寒地稲作の祖」といわれる、中山久蔵の自宅でした。
中山久蔵が初めて収穫した米が「赤毛米」です。
初収穫から今年でちょうど150年を迎えます。
クラーク博士は、稲作は難しいとされていた道央で、初めて安定した栽培に成功した久蔵に敬意を払い、「久蔵さんのように大志を抱いてほしい」と伝えたかったのかもしれません。
新球場応援メニューを開発したベーカリーショップ「ブーランジェリー アン・ユイット」です。
応援メニューは好評で、改めて新球場の影響の大きさを実感したといいます。
店舗のウェルカムマットは、ファイターズ仕様に新調されていました。
店主の江川正仁さんは、「試合を見に行く人を見たときに、これは凄いと思った。町全体が元気になればいい」と話していました。
ほかに、こんな市民の声も聞かれました。
・地価が上がり税金が高くなる。良いことなのか悪いことなのか
・車が増えるので子どもの交通事故が心配
・球場から離れているので生活は変わらない。賑やかでいい
・試合がある日、時間帯は買い物を控える。駐車場がなかった
・隠れ家的な街だったので、残念広く知られることはなんだか残念
・散歩コースがとられたようで残念
・夜の散歩コースにいい。ライトアップされてきれい
・食べ物が高いので気軽には行けない
・盛り上がっているのは市役所と野球ファンだけだと思っていたが、窓から見えるライトアップされた新球場を肴に一杯やるのがちょっと自慢
歓迎、戸惑い、静観…さまざまな思いがありました。
それでもやっぱり気になる新球場。
あす30日、楽天との3連戦で開幕します。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年3月29日)の情報に基づきます。