近年、ワインの生産地として国内外から注目されている北海道。
シリーズ「奇跡の一滴」では、北海道でワインづくりに情熱を注ぐ人々にフォーカスします。
今回は、十勝平野の中心でワインを作る、「めむろワイナリー」を訪れました。
――お話をしてくれたのは、代表取締役の尾藤光一さんです。
「ここの誕生の原点は十勝の農家の方々のチャレンジ精神なんです。それまで十勝地域では、ワイン作りといえば、自生する山ぶどうから改良した品種を使うか、道内でも比較的温暖な地域で作られたぶどうを使うのが一般的でした。ワインの本場であるヨーロッパ品種のぶどうは寒さに弱く、ここで栽培するのは難しいとされていたのです」
――そこに尾藤さんらは反骨心を抱いたということですね。
「農家である我々が培ってきた、穀物を作る技術や、土壌の知識を駆使すればできないわけがないよねという」。熱を帯びた有志が集い、取り組み始めて3年後、2019年にめむろワイナリー設立へ。
「もちろん、大変な面もありました。自分たちの農業技術があれば何でもクリアできると思っていましたが、初めての作物には通用しないこともあったり、栽培してぶどうが獲れるようになるまで結構苦労を重ねたのは事実です」
ワイナリーの起ち上げに際しては、それぞれの農家さんが収穫したぶどうを持ち寄り、一ヵ所の醸造所でワインを作る共同ドメーヌ方式を採用。「同じ品種のぶどうでもテロワール(生育環境)によってこんなにワインの味や香が変わるというのを表現したかったんです。お客さんに、より楽しんでいただけると考えました」。
農家ごとに樽を分けて、製造したワインのラベルには、それぞれの名前が刻まれています。
――生育環境によって、そんなに違いが出るものなのですか?
「正直ですね、どれぐらい違いが出るか、僕らも想像の域を出なかったんですが、蓋を開けてみると、意外と違うんだなと。それは生産者のぶどうに対するコンタクトの仕方もありますし、それぞれの土づくりの理念もあって、そこはお客さまにもぜひ飲み比べをしてみていただきたいです」
――土作りに、とりわけこだわられているそうですね。
「30年前から僕らは、一般的な作物ですけど、土の改良に注目してきました。ミネラルや、亜鉛、銅、マンガンとか成分を整えてあげると土の中の微生物活性が上がるんです。その効果は、じゃがいもや小麦よりも、ぶどうだともっとわかると感じています」
――随分勉強もされてきたと聞いています。
「めむろワイナリーの開設にあたって、いろんな産地、長野や山梨のワイナリーを訪ねた際に、土作りについてどう考えますかという質問を必ずさせていただきました。その成果として、我々の作ったワインが、我々が思うような味を表現できていて、美味しいと言っていただけたならと考えています」
――どんなワインを目指していますか?
「十勝には十勝にしか存在しえないワインがあり、一方で新しいワインもあるはず。その両方にチャレンジするのが、めむろワイナリーのやり方かなと思っています。それからもう一つ、共同ドメーヌ方式ですから、農家さんそれぞれが意見を持っていいと思うんですね。僕はこういうワインが好きだとか、私はこういうワインの方がいいとか。それを、いろいろと試していく。それがワインの幅を広げることに繋がり、飲む愉しみを広げることになるはずです」
――最後にワイン好きの方々にメッセージをお願いします。
「チャレンジ精神にあふれた農家と醸造家がここに集合しているので、その辺を感じてほしいです。面白い、今まで飲んだことがない、日本でもこういうワインがつくれるんだという感想をいただけると嬉しいです」
「ワイナリーには、ファミリーで来てほしいです。芽室町では、夏はキャンプ、冬はスキーが楽しめます。それで、あそこにワイナリーあるよね、ちょっと寄ってみようか、ワイナリーってどんな感じだろうって。普段ワインを飲まない人も、一度買ってみようかみたいな気持ちになって、手にとっていただけることを願っています」
北海道河西郡芽室町中美生2線44番地3
TEL / FAX 0155-65-2077
営業:平日 10:00~16:00
※夏期は土・日曜営業日あり。
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