近年、ワインの生産地として国内外から注目されている北海道。
シリーズ「奇跡の一滴」では、北海道でワインづくりに情熱を注ぐ人々にフォーカスします。
今回は、北海道を代表する観光地・富良野から発信される「ふらのワイン」。製造課長の高橋克幸さんにお話をお聞きします。
1972年の創立から50年。ふらのワインの醸造元・富良野市ぶどう果樹研究所は全国でも珍しい、自治体が管理運営するワイナリー。苗木の栽培から醸造、販売までを一貫して行っています。
ふらのワインの始まりを、高橋さんが教えてくれました。「減反による水田跡の利用を考えた際でした。富良野の気候風土と土地環境がワインの本場・ヨーロッパに似ていることを知り、ぶどうを作ろうと。それだけじゃなくて、それをワインにして販売して、その収益を農家の方々へ還元をしようと。農業振興を目的としてワイン事業がスタートしたのです」
「先駆となった農家の方々には相当なご苦労があったと思いますが、私が入った頃には、ある程度の形はできていました。ただ、別の問題も。赤ワインブームが過ぎ、大量消費から品質にこだわる時代に変わるタイミングで、ワイナリーが次々にでき、我々も特徴を出さなければならないと。富良野でしかつくれないワインが必要だと。そうした中でできたのが、代表作とも言えるアイスワイン。盆地の気候を生かし、凍ったブドウを使っています」
以来、今も新たなチャレンジを続けていると聞いています。「もっと富良野らしい商品の取り組みができないか、新しいブドウを使って何かできないかと」
「すでに試していることもあります。シラーというぶどう、今まで北海道では植えられていなかったのですが、非常に濃い、スパイシーな味わいのワインになりそうなんです。さらに、温暖化を見据えて、北海道では難しいとされるぶどう、カベルネ・ソービニヨンを調べてみたり、土壌成分の研究にも目を向けています」
地元の方々にも協力をいただいていると。「今21軒のぶどう農家と、ワインの品質を上げるために、変えられるところを変えいこうと話し合っています。たとえば苗木の生育。非常に手が掛かるのですが、もう7、8割まで成功率を上げています」
「あとはワインを楽しむ環境づくりにも取り組みたいと思っています。最近、ワインツーリズムという言葉も出てきていますよね。やはり当地に来ていただいて、地域の食材と一緒にワインを飲む、これが一番の楽しみ方と思っていますので」
ふらのワインの特徴はどういう点にある?「食事に合う、食中酒として楽しめるワインです。酸っぱ過ぎるとか、濃過ぎるとか、そういうのではなくて、バランスがとれたワインが中心となっています」
その中でも高橋さんのオススメの一本は?「羆(ひぐま)の晩酌というワインがあります。ぶどうはフラノ2号、私たちが品種改良して作り出したもので、味は濃い目で、野生味もある。それをアメリカンオークに入れて熟成をすることで、また、香りの豊かさも出て、ふらのワインを代表する人気商品になっています。実はこの名前をつけたのは私で、愛着もあって、皆さんに喜んでいただけるとすごく嬉しいです」
「ワイナリーがある清水山と呼ばれるエリアですが、春先には、まるで黄色い絨毯のようにもみえる「黄ガラシ」という黄色い花が綺麗に映え、夏場にはラベンダーの畑もあり、景色がとてもいいところです」
「その中を散策しながら、ワイナリーには試飲用のワインもいくつか用意していますので、ぜひ味わってもらって、ゆっくりと時間を過ごしていただきたいと思っていいます」
■富良野市ぶどう果樹研究所
〒076-0048 北海道富良野市清水山
Tel:0167-22-3242 Fax:0167-22-2513
■ワイナリー
営業時間:9:00~17:00(通年)
休館日:年中無休(年末年始を除く)
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