近年、ワインの生産地として国内外から注目されている北海道。
シリーズ「奇跡の一滴」では、北海道でワインづくりに情熱を注ぐ人々にフォーカスします。
今回は、空知エリア・三笠市にある「山﨑ワイナリー」を訪ねました。
お話をしてくれたのは、醸造家・山﨑太地さん。
山﨑太地さんは、三笠に根を張る農家、山﨑家の5代目であり、ワイナリー継承者としては2代目です。
太地さんにお会いすると、まずワイナリーを始めた4代目のことを話してくれました。
「先代は、米、とうもろこし、小麦といった農作物や、それを栽培する土地環境を多くの人に知ってもらいたくて、ワインをそのきっかけにするのだと話していました。
自らブドウを栽培し、酒類醸造免許を取得してワイナリーを営むという取り組みは、当時の北海道では第1号だったということで、随分苦労があったと聞いています。
乗り越えられたのもそうした強い思いがあったからでしょう」
以来20年。「自分たちが栽培する農作物や土地環境を、ぜひ多くの人に見てもらいたい。農村に人が集まるような景色を作りたい」と、先代の想いを受け継いだ太地さん。
今は、太地さんが、この土地にどういうブドウ品種が合うか、どういう仕立て方、栽培方法が合うか、絶えず自問自答を続け、山﨑ワイナリーにしかできない味わいやスタイルを探り続けています。
気をつけているのは、”手を出し過ぎないこと”だと、太地さんはいいます。
「なるべく自然環境を反映できるように、その年の気候をブドウやワインに持たせられるように心掛けています」
「ここ三笠市達布の地形だったり、日照、風、そういったものは、僕たちブドウ栽培者やワイン製造者の手が届かないところにあって変えられないですし、気候次第でいいブドウがたくさん獲れる年もあれば、ごく少量になってしまう年もある。
でも、その1年の雨、風、日差しというものに影響されてブドウができて、そのブドウを使って作るのがワイン。だから空知のその1年の気候風土が感じられる味になっていれば、僕としては、いい仕事ができたと満足できます」
「ワインは年号が入るお酒。そのワインが2020 年産であれば、2020年の空知の時間や空間が詰まっていると考えると楽しいでしょう」
さらに、こういう味わい方もあるといいます。
「今年のワインを今年飲むのと、5年後に飲むのではまるで違ってきます。ワインというのは、瓶に詰められた瞬間からゆっくりオルゴールのネジを回すような時間を過ごしていると思っていて。
それが適切な巻きごろでコルクを抜くと、オルゴールがちょうどいいペースで音を奏でるのと同じように、とても魅力的な風味を醸し出すのです」
山﨑ワイナリーに来ると、太地さんのいいたいことがよく伝わってきます。
「この景色がワインに入ってますよ、と。それが一番、わかりやすいかなと思っています」
13ヘクタールの面積で、4万ボトル分のブドウが栽培される景色は壮観です。
畑に入って、見て、さわって、これがワインになるというのを感じてほしいと話す、太地さん。
畑の一部を開放をしているのは、「働いている僕たちが、一番楽しんでいるということも見てほしい」と理由にあるといいます。
太地さんは、ワインで地域が盛り上がることも期待しています。
「もっと多くの方々が、ワイナリーやブドウ栽培に挑戦してほしいというのがあります。ワインが地域に対して何かできないか、これは長い時間をかけて、空知で暮らす方たちと、空知にお越しいただ方たちと、考えていきたいと思っています」
自身への課題も教えてくれました。
「試したことがない品種への挑戦であったり、既存品種においても、栽培方法や醸造方法を見直し、より品質を高めたいとか、さらにワインに馴染みのない人も多くいらっしゃると思いますので、そういった方々が入っていきやすいワインを作り、ワインをもっと普及させたいです」
「遠くの山々が先に白くなって、近くの山が紅葉して、だんだん自分達の足元のブドウも紅葉が始まって、落葉していく。で、あっという間に雪に包まれて、ブドウも僕たちも、少しお休みします。春は逆に足元から始まって、山々の雪が少しずつ消えていって、ふきのとうが出てきたり、ゆっくりやってくる。
それに合わせて、ブドウも、ダイナミックに見た目が変わっていく。成長が早いから、1 週間、2 週間でまったく違う景色に変わる。
毎年天候が同じことなんて一度もないので、いつも新鮮、ブドウ畑を歩きながら、今起きていること、今の状態ってものを感じていこうと思うと、ルーティンではあるんですが、飽きない。そこはすごく面白いです」
「みなさん、山﨑ワイナリーに来て、景色を見て、僕たちの様子も見て、いろいろな思いを巡らせて、空知で穫れた農作物や、ワインを買っていただけるとうれしいです。なんなら空知で泊まってワインを飲む、それが最高においしい飲み方だと思います」
■有限会社 山﨑ワイナリー
〒068-2163 北海道三笠市達布791-22
TEL:01267-4-4410
FAX:01267-4-4411
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