ナポリタンやカレー、ピザ、ラーメン、定食とバラエティ豊かな食事メニューを差し置いて、『パーラー花車』が最も大きく、最も豊富に、店内に掲げるメニュー写真は『パフェ』だ。A4サイズに大きくプリントした10数種のパフェを、アイドルのブロマイドのように飾り、この風景そのものが店の名物にもなっている。

これはひとえに、店の女将である畑中くみさんのパフェへの愛がなせる業だ。原点は、高校時代に『パーラ―トップス』で食べた数々のパフェ。そのときに感じたとてつもない胸のときめきが原動力になって、店をはじめる前はトップスの厨房で働いていたほど。この経歴から、味やビジュアルの構成はトップス仕込みで、今も当時メモしたパフェのレシピのノートを大切に保管している。

パーラ―花車の女将、畑中くみさん。トップスに勤務後、実家が経営する花園温泉に勤め、1987年、同温泉の一角にパーラー花車を開店。マスターの章一さんと切り盛りする。店は昨年、開店35年の節目を迎えた。

トップスで働いていた際、畑中さんがメモしていたパフェのレシピ。こうして絵を描いて詳細を記しているものや、ソースの作り方など文章でメモしているページがある。

こうして、女将が愛を注ぎつづける花車のパフェは、季節感を重視しながらこれまでに『里山』『桜姫』『ハワイアンパフェ』などのオリジナルも多数生み出してきた。中にはパフェ愛が高まり過ぎて、マスターで夫の章一さんや家族を困惑させる一品も生まれた。「『卒業写真』というパフェは、家族に『恥ずかしいからやめてくれ』と止められましたけど、とうとう発表しましたね(笑)。ユーミンの曲をイメージしてつくったパフェで、ミントゼリーの入ったグラスの下から上に向かって成長していく様子を表現しています。一番上に乗せているのは、網のかかったメロンなど、10代の頃は高級品で手が出なかったフルーツ。大人になって自分で食べられるようになった喜びを表しています」

こうして、ひとつのグラスに物語を詰め込む花車のパフェ。写真は、広告用に撮影したものを店内に飾っているのだが、パフェの世界観を表現するため、この撮影のときも手を抜かない。「パフェに合わせた背景はすべて私がセッティングしていますね。店の2階の庭を使ったり、小道具を用意したり、その時々でいろいろな工夫をしています」。

今後も更新されていく花車のパフェと、そしてパフェ写真。パフェをこよなく愛する女将と共に、今後も愛でていきたい。

パーラー花車のパフェ写真

広告用に撮影したものを、A4の紙にプリントし、パフェの世界観や値段を添えて展示している。なお、今時期はいちごの旬。いちごを1パックまるごと使った『イチゴデラックス』が女将のおすすめだ。

【パーラー花車】

・函館市花園町40-34 
・0138-55-8607

(『peeps hakodate』110号・特集「写真は語る。」より)

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