「アーニャ、ピーナッツが好き」
「アーニャ、ピーナッツが好き」
「アーニャ、ピーナッツが好き」
呪文のような女の子の声が、我が家のリビングに響きわたる。
発信元は、小学5年生の長女が食い入るように見つめるスマホのTikTok(のはず)。間違いない…。
アーニャは、漫画「SPY×FAMILY」のメインキャラの1人。10月からテレビアニメのシーズン2がスタートし、毎週録画中。長女にねだられたコミックは、最新刊の10巻まで買い揃えた。
えっ、「呪術廻戦」「鬼滅の刃」にハマっていたのでは、と思った方、 前回の記事を読んでいただき誠にありがとうございます。
飽きっぽい長女は、2大漫画のブームが一息ついた空気感を感じ取ったか、今度は「SPY×FAMILY」に“一時避難”。
父親である筆者も長女の気まぐれに引きずられ、親子のコミュニケーションをわずかでも深めるべく後追いしている。長女は筆者のスマホを、時に無断で借りては、ひたすら関連動画を見続けている。
ちなみに、我が家は「勉強した時間の分だけ、スマホを使える」ルールを一応設けている。
「働かざる者、食うべからず」ならぬ「勉強せざる者、スマホすべからず」ということです、ハイ。
そこそこ勉強するようになった気がするが、動機が不純なので、どこまで身についているか相当疑わしい。
せっかくなので今回も読んでみると…おじさん的には、面白さ以上に、いろいろ考えさせられることしきり。
西国の凄腕スパイ・ロイドが、冷戦状態にある東国の権力者に近づくため極秘任務を課せられ、物語は動き出す。他人の心が読める超能力少女・アーニャ、細身の女性ながら超人的な身体能力を誇る殺し屋・ヨルとの出会い…
3人はそれぞれの目的のため、正体を隠し、父親、母親、娘として暮らすことに。「スパイ」「超能力」「殺し屋」という設定はありがちだが、この3つを「家族」というキーワードでかけ合わせた漫画はありそうで無かったような。
本音をみせず建前だらけの3人の会話はユーモラスで笑いを誘う一方、スパイや殺し屋として任務を遂行する態度は残酷かつ冷徹でヒヤリとする(特に目つきが怖い)。
また、いつ壊れてもおかしくない偽装家族の脆さと向き合いながら、むしろ建前を貫き通すことで、血のつながった家族以上に絆を深めていく。脇役を含め、各キャラが内面に抱える光と影のギャップの描き方が巧みで、程よくメリハリが効いている。
戦闘の凄惨な場面は少なく、コミカルに物語は進む。心理描写で長ゼリフになる時はあるが、長女は「呪術廻戦」よりも世界観に入りこみやすいようだ。但し、敵対する脇役があっさり死んでいくなど、殺害シーンは軽いタッチで描かれ、命の重みはさほど感じられない。これはこれでどうなのか、お父さんとしては一抹の不安がよぎる。とはいえ「子どもの教育によろしくない」といった批判は今回もあまり聞かない。
またも深く考えるのを止める。
長女のお気に入りのキャラは、もちろんアーニャ。
理由は「面白くて、かわいいから」。王道ですね。
おじさんの目には、太々しくて、皮肉屋に映る。相手の心が分かるため妙に大人びていて、勉強はさぼりがち。
良い子とは言いがたいが、反抗期に突入し始めた長女はシンパシーを感じるようだ。
反面、孤児院で愛を知らずに育った孤独感や悲しみ、他人の心が分かり過ぎるゆえの人間不信…
愛情や信頼を人一倍求めているシリアスな一面にもピンときてほしいところ。
ひねくれ者の自分が注目しているキャラは、東国の権力者・デズモンド。
西国のロイドが極秘任務でその動向を探っている。テロや戦争を企み、東西の平和を脅かす危険な男とされ、感情をほとんど表に出さず、掴みどころがない。家族関係もクールにみえるが、息子には父親らしい一面をさりげなく垣間見せる。
果たして、この男は本当に「悪者」で、東国は「悪」なのか。ロイドは本当に「正義」で、西国は「善」なのか。読者がふと立ち止まって考える“余白”や“含み”を残した描き方は奥深い。
他の漫画と明らかに一線を画している、と評論家ぶって分析してみる。
長女に「東国と西国、どっちが正しいと思う?」と試しに尋ねてみたところ、「デズモンドの方が悪い奴っぽいけど?まあ、どっちもどっちじゃない」と意外に核心をつく答えが返ってきた。
内心驚いていると、「それより五条先生の次に強いの誰だと思う?やっぱり、羂索(けんじゃく)か宿儺(すくな)かな?乙骨くんの呪力は底無しだけど、消費が激しいから最後は厳しいかもね」。
いつの間にか呪術廻戦トークに切り替わっている。んー、やっぱり気まぐれだ。
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文:ゆゆパパ(Sitakke編集部)
イラスト:ゆゆ(小5の長女)
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