視聴者からの疑問や悩みを調査するHBC報道部の「もんすけ調査隊」。
こんな疑問が寄せられました。
「昔のおたる水族館で冬の間トドが朝里川温泉に連れて行かれたのはなぜですか?」
え、トドが水族館から温泉に!?
早速調査してみました。
札幌から車で1時間ほどの港町、小樽。
美味しい海の幸や、運河、そして歴史的な街並みに魅せられ、大勢の観光客が訪れる街です。
そんな小樽の人気スポットが、今回の調査スポット、「おたる水族館」。
問題のトドがいるのは、水族館内の「海獣公園」という屋外エリア。
海を仕切っただけの豪快なプールで、現在はトド13頭が飼育されています。
大きくなると3メートル以上、重さも1トンを超えるトド。
おたる水族館では、そんなトドたちによる迫力満点のトドショーも楽しめます。
それにしても、こんな快適なプールがあるのに、本当に引っ越しが必要だったのでしょうか?
おたる水族館の獣医師、角川さんに尋ねてみると…
角川さん「朝里川温泉には過去三年ほどトドを移動したという話を聞いている」
やはり、トドは本当に、引っ越しをしていたようです!
トドたちが引っ越していたのは、水族館から10キロ以上も離れた朝里川の温泉。
貴重な引っ越しの様子は、HBCのライブラリーに残っていました。
これは、1987年に撮影された映像です。
雪が積もる中、檻の中に入れられるトド。
その後、クレーンで吊るされてトラックの荷台に載せられました。
向かった先は、朝里川温泉にある特設プール!
これがトドファミリーのお引っ越しです。
ちなみに、プールの水は海水ではなく、近くを流れる川の水だったといいます。
なお、プールはすでに姿を消しており、現在は朝里川温泉ホテルの「朝里の森キャンプ場」となっています。
では、いよいよ今回の調査の核心に迫ります。
どうしてトドは引っ越しをしていたんでしょう??
獣医師の角川さんは、こう説明します。
「トドというのは漁業被害をもたらす害獣でもある。今もそうだが、(トドに)網を食い破られて漁業被害が出ていますので、当時それを防ぐために、もしかしたら水族館のトドにつられて野生のトドが来ているんじゃないかということで、一度トドがいない状態でどうなのかと検証するために朝里に移動した」
そう、実は、壮大な実験だったのです!!
海のギャングと言われるトド。
北海道に姿を現わすトドは、夏場、海の資源の豊かなアラスカやサハリン周辺に生息しています。
しかし、流氷が海を覆う冬は、エサを求めて石狩や小樽まで南下してくるのです。
小樽には、トド岩と呼ばれる島もあり、多い日には、島がトドで覆いつくされるといいます。
角川さんは「この辺で冬に見かけるのは、多い日で1日40頭~50頭くらい上陸しているのを見ることがあります」と語ります。
では、水族館のトドの引っ越しは、そんな野生のトドたちに変化をもたらしたのでしょうか?
「移動の前と比べても移動後も野生トドは来遊してくるので、特に大きな変化はありませんでした」
なんと、トドの引っ越しは、野生のトドの来遊に効果がなかったといいます・・・
角川さんは「当時も今もトドという野生動物の生態自体あまりわかっていない。野生動物と人間の共存ということが一番のテーマになりますけど、なかなか両立は難しい。いろんな試行錯誤をしながら漁業被害を抑える方法は、今、現在も模索中。」と語っていました。
ということで、今回の調査依頼「昔のおたる水族館で冬の間トドが朝里川温泉に連れて行かれたのはなぜですか?」。
調査結果は「おたる水族館のトドは野生のトドを呼ぶのか実験するため、冬季間、朝里川温泉に引っ越ししていた」。
1987年ごろの3年間だけ、試験的に引っ越していたということです。
生態のあまりわかっていない野生のトド。
そんな野生のトドとの共存を図るための、おたる水族館の試行錯誤のひとつだったのですね。
※掲載の内容は番組放送時(2022年9月22日)の情報に基づきます。