みなさん、和菓子の「べこ餅」を知っていますか?
白と黒のツートンカラーで、葉っぱの形をしているのが特徴です。
北海道では、端午の節句やお彼岸、そして日常的にも食べるべこ餅ですが、実は北海道だけで食べられている!?
一体そのルーツはどこにあるんでしょうか。
調査してみました。
まずは、札幌市手稲区にある1895(明治28)年創業のお米と和菓子のお店「水車」を訪ねました。
作り方を見せてもらうと・・・
米粉と黒砂糖で作った黒い生地と、上白糖を混ぜた白い生地を細長く伸ばして合わせます。
それを1個のサイズに切り、木の葉の型で形成。
せいろで蒸したら、美味しいべこ餅の完成です。
では、このべこ餅、どこから来たのでしょうか?
水車の蓑輪代表にお伺いすると、べこ餅のルーツは、函館にあるとのこと!
子どもの健康を祈って、親が心を込めて作ったといわれているんだとか。
北海道でもっとも歴史のある、函館。
道内でいち早く開港したため、多くの文化が誕生した都市です。
函館で創業122年の老舗「丸井栄餅」に行ってみると・・・
ありました!こちらのお店でも、べこ餅を発見!
しかし、葉っぱ型はしているものの、なぜか茶色一色です。
こちらのお店では、米粉に黒糖を混ぜた生地を1個の大きさに切り、手作業で葉っぱの形に。
それからせいろで蒸した、べこ餅を販売しています。
これは、一体どういうことなのでしょうか?
丸井榮餅の佐藤代表によると、以前も白黒のべこ餅を作っていましたが、「黒だけの方が美味しいだろうな」と思い、現在のような形にしたそう。
「自分が美味しいなと思った物を売りたいので変えた」と話します。
では、べこ餅の起源は函館なのでしょうか?
佐藤代表は「北海道はもともと和人が住んでいたわけではないので、発祥は青森とか東北とか、向こうの方なんだろうなとは思います」と語ります。
なんと!
べこ餅のルーツは青森!?
そこで、北海道から海を渡り、青森へ!!
訪れたのは、下北半島にある横浜町の道の駅「道の駅よこはま」です。
その売店で発見したのは・・・
色とりどりの花。
そして、可愛らしい動物などの模様が描かれた餅菓子。
葉っぱの形ではありませんが、なんと、これもべこ餅だというのです!
一体どういうことなのでしょう?
こちらのべこ餅を作っている横浜町支部加工部会の内山さんによると、色とりどりのべこ餅ですが、もともとは、「黒い結びの模様が最初だった」といいます。
そう、青森でも、北海道同様、べこ餅は白と黒色だったのです。
しかし、「今は見ても楽しんでもらえる物を作っている」といい、少しずつ華やかな模様に変化していったようです。
色とりどりの生地でパーツを組合せ、のばしてつくる青森のべこ餅。
まるで金太郎あめのようですね。
では、やはり、べこ餅のルーツは青森なのでしょうか?
内山さんは「青森の下北地方が発祥だと思う。南部地方にはないんです。」とのことでした。
そこで、研究家の方にも話を聞いてみることに。
12年に渡りべこ餅の研究している北海道文教大学の荒井三津子客員教授です。
荒井客員教授は、「津軽海峡を渡ってきたという説と、北前船で日本海側から入ってきたという、二つの経路があるだろうと思っている」と話します。
北前船とは、江戸時代から明治時代にかけて、商品を売り買いしながら、大阪から瀬戸内海・下関を経て北海道まで、航海していた商船団のこと。
青森から伝わったべこ餅と、その商船団がもたらしたお菓子が合わさって、北海道独自のべこ餅が生まれたと荒井客員教授は考えているそう。
荒井客員教授によると、江戸時代に中国から伝わったお菓子が、「ういろう」と呼ばれるお菓子になり、それが山形では「くじら餅」に。
そして、くじら餅が青森でべこ餅となり、さらに函館で北海道の木の葉型のべこ餅に変化したのではないかと考えているとのことです。
※諸説あります
「津軽海峡」、そして「北前船」。
2つのルートから来て、北海道の中で熟成されたお菓子ということなんです。
和菓子店だけでなく、スーパーマーケットでも手に入る、北海道の郷土菓子べこ餅。
皆さんも、そのルーツに思いをはせて味わってみてはいかがでしょうか。
※掲載の内容は番組放送時(2022年8月26日)に基づきます。