ベテランの道民はそれが北海道弁だと知らずに使い、北海道初心者は「意味わかんない」と戸惑う…。そんなすれ違いはもうやめにして、お互い歩み寄って、方言の勉強でもしましょうよ。お待ちかね!第2弾「意味を勘違いしがち編」をお届け!
2回目ですが今回も言います…めちゃくちゃあります!!!
ちょっと前ですが平昌オリンピックでカー娘が「そだねー」を連発したことで、北海道弁が「かわいい!!!」と話題になりましたよね。同時に、「え、そだねーって、北海道弁だったの!?」とショックを受けた道民も多かったみたい…。
そこで、東京都出身・10歳で北海道に渡り、数々の北海道弁にまどわされてきた編集部の一人が厳選した、全国民に教えたい北海道弁を紹介します!
Part.2の今回は、【同音異義語があるために会話の事故が起こりやすい】北海道弁を5つにしぼってご紹介します。知っておかないと、アンジャッシュのコントみたいな食い違いが本当に起こります。
ここここここっこっこわいこわい、こわいぃいいいぃぃいいいい!!!!!
1位なのは、この「こわい」じゃないんです、この「怖い」じゃないんです…。でも、初めて聞くと「こわい」って、これしか思い浮かばないですよね。
ちなみに使い方は、「なんか今日、こわいわぁ」「すごい走ったから、こわいんだよね…」のような感じ。
正解は・・・
疲れた、だるい、体調が優れないです。
年配の方からは今でもよく聞きます。私もおばあちゃんから「なんかこわいわぁ」と初めて聞いたとき、
私「なんで?」
おばあ「なんでだろう…」
私「わからないの?」
おばあ「思い出せないさ」
私「なにがこわかったか?」
おばあ「こわいのは今」
私「今なにがこわいの?」
おばあ「ばあちゃんが怖いの」
私「ばあちゃん怖くないよ?」
という超不毛な会話を繰り広げたことが数回あります。「体調が悪い」という意味だったと知って、正直なんでそんなに紛らわしいのを方言にしてしまったんだ…と困惑しました。でも、北海道弁で「恐ろしい」の方の「怖い」は、「おっかない」といいますからね。年配の方が「こわい」と言ったら、体調だと思った方がいいです。
「エアコンがきかない」「気がきかない」「話をきかない」…どれも違うんですよこれが。
「ほんと、あの子はきかないねぇ」というように、人に対して使う言葉なんですね~。あまり言わないですが「私きかないから」という言い方も間違いではないです。ほらね、アンジャッシュ現象がいとも簡単に起こりそうでしょ…。
正解は・・・
気が強いです。
注意点は、「あの子、気が強いからね~」だと、がんばればホメ言葉にもとらえられますが、「あの子、きかないからね」という言葉は道民からするとネガティブに聞こえちゃうこと。
「自己中心的」のニュアンスが少し入っているような気がします。
文字通りのI can tie up!!(私は縛ることができます!!)ではないですよ。
ですが仮に、
「この新聞まとめて~!このヒモでしばれる?」
「うん!大丈夫!しばれる!」
というシーンが道内で起こったとしても、この3位の「しばれる」と混在して、話が食い違うなんてことはもちろんありません。意味が違いすぎるので、主語が同じになることはまずないんですよ。
正解は・・・
気温が低く、ひどく寒いです。
これは本当に、北国ならではの言葉ですね。
とてもこの「しばれる」を、標準語では表現できません。「ひどく寒い」では、正直物足りないんですよ。どうしても言い換えるのなら「鼻毛が凍って耳がカチカチになって、まつ毛もスースーするくらい激寒すぎてもはや痛い」くらい長くなっちゃいますね。だから「しばれる」は便利。こういう方言ならではの言葉は、これから先も残っていくのでしょうね。
「吐く」の方ではなく、「履く」の意味です。え?「履く」って北海道弁じゃなくて、標準語でも使うでしょう。「靴下を履く」「スカートを履く」「スニーカーを履く」…。そう、そうなんです。ただ、道民が履くのはそれだけじゃないんです。
正解は・・・
はめるです。
つまり「手袋をはめる」「手袋をつける」のことを、「手袋を履く」というんです。いやいや、履くなよ!”手”ぶくろなんだからァ!と思いますよね。安心してください。ちゃんと手に履くんです…。
北海道で「手袋つけた?」なんていうと、「どこにつけたの?(つるしたの?)」という返事が返ってくる可能性があります。手袋は、手に履くものなんです。
そしてもうひとつ、道民が履くのはタイヤです。これも北国ならではのエピソードですが、道民は冬になる前に車のタイヤを、夏用から冬のスタッドレスタイヤに交換します。その際に言うのが、「タイヤ履き替えないと」です。そうです。道民はタイヤも履くんです。
ですがこれは、車愛好家の方からするとわりと普通の言い回しらしいです。デザインを変えるときなんて「服を着せる」とか言うらしい…。俗語?として全国的にも広まってきているので、北海道弁とは言い切れないかも。
5位にしただけあって、この答えは案外ひらめくかもしれません。「ゆるくない」んです。つまりは「ゆるい」の反対語…。「かたい」ではないよ。
正解は・・・
キツい、大変、楽じゃないです。
「ゆるい環境」と「ゆるくない環境」というと、覚えやすいですよね?でも不思議なのが、どう考えても「ゆるくない」というよりも、「キツい」という方が短くて簡単なのに、どうして方言としてここまで広まって今でも根付いているのか…ということ。
それはおそらく「キツい」という言葉よりも、「ゆるくない」の方がオブラートに包まれていて、やっぱりどこかやさしいんですよね。北海道弁のイントネーション、語尾を含めると、
「この仕事もゆるくないさねぇ~」(この仕事も楽じゃないよねぇ~)といった感じ。
物事をハッキリ言えない、道民の穏やかな性格が方言ひとつひとつにも表れているような気がします。
さぁいかがでしたか?これは会話も事故ってしまいますよね…。
今回は「意味を勘違いしがち編」をお届けしましたが、
「えっこれ方言なの編」
「日常超使い編」
もお送りしたいと思ってます!次は北海道弁をバリバリ使う旭川市民の皆様に「これって方言なの?」という驚きをいくつもお届けしますので、ぜひぜひ楽しみにしていてください。
それではまた次回!したっけねー!
【参考文献】
『出身地がわかる! 気づかない方言』(篠崎晃一/毎日新聞社/2008年)
『都道府県別 全国方言小辞典』(佐藤亮一/三省堂/2002年)
『全国方言 スラスラブック』(服部將太/セントラルSOG/2005年)
『方言の日本地図 ことばの旅』(真田信治/講談社/2002年)
協力:北海道弁を日常的に使う旭川市民の皆様
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