2022.02.10

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「誰かが泣きながら作ったものは嫌」世界の雑貨がそろう、札幌の店が目指すもの【こう生きたっていい】

札幌に、「240種類のチョコレート」が集まっている店があります。しかし、チョコレート専門店ではありません。

キーホルダーやアクセサリー、ワンピースや靴下、バッグにポーチ・・・。およそ30カ国の雑貨が、数千個集まっています。

そのひとつひとつが、店主が旅先で出会ってきた“世界の暮らし”につながっています。

連載過去記事一覧:「こう生きたっていい」(https://sitakke.jp/tag/139/)

フルーツ系もカリカリ食感も・・・新しい味に出会える

札幌の地下鉄南北線北12条駅から歩いて5分ほどの距離にある雑貨店「みんたる」。冬になると、ドアの横にびっしりと並んだチョコレートが出迎えてくれます。

かわいいパッケージに包まれたチョコレートの数々は、全部で240種類!

すでに世界的な認証を受けた有名フェアトレードブランドのものから、珍しいものまで並んでいて、まだ食べたことのない味に出会えそうです。

店主の和田美香代(わだ・みかよ)さんは、年齢は「22歳くらいということにしておいてください」と答える、お茶目なお人柄。どんな味が好みかを伝えると、おすすめのチョコレートをピックアップしてくれます。

たとえば、「フルーツ系」が好きな人には、オレンジやラズベリーのチョコレート。

「苦い」ものが好きな人には、カカオ分の高いチョコレートを勧めます。最も苦い「100%」のチョコレートだけで、6種類もあります。

甘いものが好きな人には、青いパッケージがかわいい「ウィンターチョコレート」。シナモンやコリアンダーなど、スパイスが入っているんです!

乳化剤を使わずに、最長72時間かけて練り上げる、スイスの伝統製法で作られていて、カカオの本来の香りとなめらかな舌触り、スパイスや黒糖の奥深い甘みを楽しめます。

このブランドのチョコレートは、毎年最初に売り切れるそうですよ。

「カリカリ食感」が好きな人には、香ばしいカラメルクリスプが入ったチョコレート。体温で溶け始めるココアバターを使っているため、とろけるような口溶けで、なめてじっくり味わっても、噛んで食べても楽しめる一品です。

「カリカリ食感」もほしいけど、チョコレートそのものをしっかり味わいたい人には、「カカオニブ」入りのチョコレートがおすすめ。「カカオニブ」は、カカオ豆を小さく砕いたものなので、カカオの苦みや香りを強く感じられます。

「誰かが泣きながら作ったものは嫌」

「みんたる」に並ぶ個性的なチョコレートの多くは、「フェアトレード」商品です。

「フェアトレード」とは、生産者に適正な対価を支払って、持続可能な生産と生活を支える仕組みのこと。販売価格を安くするために、開発途上国で子どもが働かされるなどの“搾取”をなくすための取り組みです。

「意識が高いこと」に聞こえますが、本来は「当たり前」のこと。

和田さんは、「気に入って買ったものが、誰かが泣きながら作ったものだったら、嫌でしょう。どうせ買うなら“搾取”されているものより、フェアトレードのものがいいと思わない?」と問いかけます。

店内には、アフリカやアジアから買い集めたフェアトレード雑貨が、ところ狭しと並びます。

かわいらしい動物モチーフのものが多いと思ったら、奥から個性的な柄のポーチも登場・・・。

どんな感性の人が作ったのか?その国の特産品で作ったのか・・・?つい想像してしまう表情です。

和田さんは「いろんな物語や背景があるものっていいよね。“フェアトレード”だから、と意識して買ってもいいし、かわいいから買う、でもいい。買うことに理由はいらない、もっと自由でいいと思う」と、穏やかに笑っていました。

フェアトレード会社を通じて仕入れたもののほか、和田さんが直接世界をめぐって買い付けたものも多くあります。コロナ禍で海外旅行が遠のいた今、札幌にいながらも世界を感じられるお店です。

「みんたる」は今年で18年目。店を開くまでには、和田さんの自由な「旅」のような人生がありました。

会社をやめて自由に海外と行き来・・・「好奇心の塊だから!」

和歌山県産のみかんと、アフリカ・マリ共和国のハイビスカスティー

この日、訪れたお客さんに「自由に食べて〜」とみかんを配っていた和田さん。みかんの名産地・和歌山県で生まれ育ちました。雑誌で見た“都会”に惹かれ、東京の大学に進学。特に将来の夢はありませんでしたが、世界に憧れがあったため、観光学科を選びました。

大学3年生のとき、初めての海外旅行にも関わらず、ひとり旅に挑んだそう。心配した親に「せめて」と言われて、フランス・パリを目的地にしますが、着いたその日に「寒かったから、夜の列車でスペインに行って、気づいたらモロッコにいて・・・みたいな感じで、2か月くらい旅した」といいます。

「怖さはまったくなかった。すごい楽しかった!」旅に魅せられた和田さんは、これまでに30数カ国をめぐり、海外の知り合いも増えました。

大学卒業後は大手の旅行会社に就職。東京で働いていましたが、保険会社に転職し、旅行でいいイメージを持っていた北海道への転勤を希望しました。

札幌は「都会だけど自転車で通勤できたり、ちょっと足を伸ばせば自然があったり、気に入った」といい、保険会社を退職後も、札幌を拠点に「自由な働き方」をしました。出張料理人のお手伝いで1年ほど滝川と行き来したり、クマやシカなど野生動物を調べる会社を手伝ったり、「2か月くらいネパール行ってきます」と旅に出たり・・・。

「仕事を辞めてフラフラしてたら、ヒマなら手伝いなさいって言ってくれる知り合いがいて。北海道出身でもないのに、店ができるほどのベースができたのは、会社員のときも異業種交流会とか講演会とか色々なところに顔を出していたからかな」

人とのつながりが増えていった理由は、和田さんが「好奇心の塊だから!」。色々なイベントに関わるうちに、「打ち合わせも、当日の開催も、打ち上げも自由にできる場所があったらいいのに」と考えたのが、店を始めたきっかけでした。

集まって話せる場所にしたいと、雑貨店だけでなく、レストランも兼ねた(※まん延防止等重点措置期間中はお酒の提供なし)

人が集まって話をしたら、何かが生まれる・・・そんな場所にしたいと、アイヌ語で「広場」を意味する「みんたる」を店名にしました。

「好奇心の塊」が店を持ってジッとしていられるのか・・・周囲に心配されたと言いますが、海外に買い付けに行ったり、札幌市外で出張イベントをしたり、今も自由な働き方をすることで、楽しく過ごせているそう。

キューバに旅行

「自由な生き方」を追い求めてきた和田さんは、「コロナ禍で、いつかやろうと思っていたことができなくなった人、たくさんいると思う。やりたいと思ったことは、どんどんやったほうがいいのよ。・・・私もいつか掃除しようと思って、ずっとしてないけどね!」と笑い飛ばしていました。

ネパールでホームレスを見かけなかった理由

フェアトレード雑貨店にしたのは、旅先で目にしてきた「貧富の差」が気にかかっていたからです。ボロボロの服を着た人や体を悪くした人が物乞いをしていたり、ものを奪ったりする光景が、アジアやアフリカ、ヨーロッパの都市部と世界中にあったといいます。

「でも、勝手なイメージで、貧しい人が多いのかな?と思ってたネパールでは、意外と、あまりホームレスを見かけなかったの。誰かが誰かの面倒を見ているような国だった」

ネパールの食堂で、食器を下げている子どもを見かけたとき。店の人に聞いてみると、「あの子は親が離婚して、両親ともどこかに行っちゃったから、うちで面倒見てるんだ〜」と平然と答えられたといいます。

「ネパールみたいに、お互い様で迷惑をかけ合える社会になったらいい。私は貸せるほどのお金はないけど、困ったって言いに来てくれたら、『ごはん一食ふるまうから皿洗い手伝って』とか、『あそこの家で雪かきバイトしてみたら』とか、誰か紹介できるかもしれないしね。とりあえず、困ったときに『助けて』って言えたらいいよね」

この日、「みんたる」には、なぜか焼き芋が。イベントで知り合ったという焼き芋屋さんが、テーブルの一角を借りて販売していました。

近くの北海道大学の学生サークルの活動や、ライブやワークショップ、後援会や映画の上映会の会場になることもあります。

「みんたる」は雑貨店の枠を超えて、人が自由に頼り合う場所になっています。

その頼り合う輪は、雑貨を通して、世界とつながっています。

「このカゴはどうして歪んでいるんだろうって思ったときに、平らじゃない場所で作っているからかなとか、想像しても楽しいじゃない?この人の作るものはどうしてこんなに形が違うんだろうと思ったって、よく考えてみたら、大きいのが好きな人も小さいのが好きな人もいるから、サイズは違ってもいいのかと思える。ものを通じて、作った人の暮らしを想像してほしい

色も大きさも柄も、ひとつひとつ違うラオスのポーチ

「私の頃のような、遊んでいただけの学生時代に比べたら、国際協力に興味を持つような、意識の高い若者は増えてると思う」と話す和田さん。しかしここ5,6年は、海外に興味を持って訪れる若者が減っていると感じているそう。

コロナ禍でますます直接行くことは難しくなった海外ですが、今も私たちの日常は、食べ物や日用品を通して世界とつながっています。

誰かが泣きながら作ったものなのか、こだわりを持って楽しく作ったものなのか・・・作った人の暮らしに想いを馳せながら、「もの」と向き合ってみませんか。

***
フェアトレード雑貨&レストラン「みんたる」
・札幌市北区北14条西3丁目
・電話番号:011-756-3600
・営業時間:午前11時45分〜午後10時
・定休日:日曜、月曜、祝日 
※「まん延防止等重点措置」などにより営業日・営業時間の変動があります。
最新情報は「みんたる」のホームページでご確認ください。

※2月10日(木)〜13日(日)は、イベント出店のため店舗はお休みです。
・「チョコ×異国雑貨 in 丸井今井 YORIAImarket
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連載過去記事一覧:「こう生きたっていい」(https://sitakke.jp/tag/139/)

※掲載の内容は取材時点(2021年1月)の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、最新の情報は店舗にお問い合わせください。

文:Sitakke編集部IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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