2025.01.21

暮らす

「かわいそうなキタキツネ」を「もっとかわいそう」にするのは誰?…高校生が向き合った、野生動物と人

モヤモヤを抱えたまま生きていく

北海道大学高等教育推進機構CoSTEPの特任講師で、キツネの研究をしている池田貴子さんは、この半年間、高校生の学びをサポートしていて、イベントにもパネリストとして参加しました。

池田貴子さん

池田さんは、「野生動物は人によって何をリスクととらえるかも違うし、人によって正解が違う」と話します。

クマによる人身被害は誰にとってもリスクかと思いますが、通学路に足跡を見つけて集団下校で警戒する人もいれば、地域によっては「クマが家の裏山に見えても、近づいてくるわけじゃないし、いつものことだから気にしないよ」という人もいるかもしれません。
「クマはこわいけど、シカやキツネは駆除はかわいそう」など、動物によって考え方が変わるという人もいるかもしれません。

今回高校生たちが向き合ったのは、一つの正解を永久に見つけられない、難しい問題です。

池田さんは「だからすっきりしない、モヤモヤした気持ちになった人もいたと思う」と、高校生たちに語りかけました。
正解が見つからないから放棄するのではなくて、そのモヤモヤを抱えたまま生きていくことが大事。あした何ができるか、今はできないけど10年後なら何ができるか?自分に何ができるか、一人じゃできないけど協力したら何ができるか?具体的に言葉にしながら考えてみよう」

心のすみに…

午後は他校の生徒と混ざり合ってグループを作り、現状の課題や、解決策について話し合いました。

対策ボランティアについての話題では、「どうしたら人はボランティアに参加したいと思うか?」「何かリターンがあれば…」「ラジオ体操のスタンプカードみたいに…」と話したり…
シカの食肉加工の話題では、シカ肉を食べる文化を促進するために「ジビエ料理コンテストはどうだろう」「シカ肉を食べられる店を知らないから、わかりやすく知る方法があればいいのかも」と話したり…。

それぞれで学び、考えてきた経験がある人たちが集まると、どんどん具体的に話が前に進みます。参加した高校生のひとりは、「会ったことのない高校生とディスカッションするのは刺激になった。自分が住む地域とは動物との距離感に違いがあることもわかったし、自分が調べた以外の動物にも興味を持つきっかけになった」と話していました。

それぞれがじぶんごとにして考え、高め合う高校生たち。
こうした人材が、野生動物との適切な距離を保って暮らせる未来を作っていくのだなと、今後の可能性を感じるイベントでした。

イベントの中では、「正しい知識を伝えることの大切さ」が共通して語られました。
今回の取り組み自体が、その役割を果たしていたように思います。

それぞれの学校が、生徒が自分たちで調べ考える時間を設けたこと。
遠く離れた学校なのに、連携して一緒に学べる場所を作ったこと。
専門家も仲間に入り、その学びをサポートしたこと。

その機会に、高校生たちが真剣に向き合い、前向きに話し合っている姿が印象的でした。

池田さんは最後に、「野生動物に関するニュースに触れたときに、ニュースで語られた以上のことまで、いい意味で深読みする習慣ができたらいい」「どこか心のすみに、野生動物との関係性を置いて、これからも過ごしてくれたら」と語りかけていました。

連載「クマさん、ここまでよ
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

取材・撮影:HBC報道部、Sitakke編集部IKU
文:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2025年1月)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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