2023.09.30
深める9月10日、女性が向かったのは札幌で行われた講演会。
「赤ちゃんポスト」を日本で初めて開設した、熊本の慈恵病院の蓮田健(はすだ・たけし)理事長です。
全国から赤ちゃんポストに預けにくる人たちについて、「後は必死の覚悟、背水の陣。赤ちゃんポストがなければ 後は死ぬしかない みたいな感じで来ている人が現実にいる」と話します。
全国では、若い妊婦が孤立出産したり、赤ちゃんを遺棄したりする事件が相次いでいます。
慈恵病院の蓮田理事長は、当別町で赤ちゃんポストを運用する女性の相談に乗るとともに、彼女の立場に理解を示しています。
「彼女を責める前に、 なんで彼女のところでないとだめだったか 社会で考えないといけない」
医療ケアが必要な赤ちゃんを、なぜそもそも親が行政に相談できなかったのか…。
蓮田理事長は「そういう事情を抱えている人たち。既存の行政サービスの 限界を超えた人たち なんですよね」と話します。
2022年、道内の若い妊婦から女性に寄せられた一通の手紙があります。
「出産を誰にも知られたくない」と相談を受けた女性は、慈恵病院を紹介しました。
このことで病院にだけ身元を明かす「内密出産」に繋がり、赤ちゃんと妊婦の命が救われました。
内密出産をした後に届いた手紙にはこう書かれています。
「国から認められる施設になってほしいと思っています。1つでも多くの命が救われますように。これからも頑張ってください」
女性は、赤ちゃんポストの運営について「どんな人であっても」受け入れていくと改めて話します。
「医療ケアの必要あるお子さんで、どこからも断られてしまって、実親さんも事情があって育てられないということであれば、私は躊躇(ちゅうちょ)せずに喜んでお迎えをする」
そして一番に言いたいこととして、 預ける人にも「生きてほしい」 のだと思いを語りました。
「お母さんが育てることができない事情があるならば、お母さんは産むところまでを担ってもらって。それからその子を愛して、大切に育ててくれるのは、別な人が担うのもありだと思う。だから『命を絶たないでほしい』というのが願いです」
■父親はわからない、でも産み育てたい…「ひとりだけど、ひとりじゃない子育て」につなぐ居場所