2023.09.29

暮らす

北海道に迫るもうひとつの巨大地震…しかし対策には課題が。先進地から学ぶ命を守る知恵

44人が犠牲になった胆振東部地震から、9月6日で5年がたちました。

必ずやってくるといわれる巨大地震から命を守るための道すじを、津波対策の先進地から見つめます。
  

連載「じぶんごとニュース

津波対策の先進地

千島海溝と日本海溝で想定される巨大地震。
千島海溝では、今後30年以内に、マグニチュード8.8以上、東日本大震災クラスの巨大地震が、7%から40%の確率で発生し、最悪の場合、死者は10万人にのぼるとみられます。

大きな被害をもたらすのは「津波」です。
一方、対策をすれば、死者は8割減らすことができます。

人口1万人あまりの小さな港町、高知県黒潮町(くろしおちょう)は、カツオのマチで有名ですが、津波対策の先進地としても知られています。

きっかけは、南海トラフ巨大地震の被害想定。
建物の11階、最大34.4メートルの高さの津波という、日本で最も厳しい被害想定が示されたことでした。

画像提供:黒潮町

黒潮町情報防災課・村越淳課長は、「34メートルの想定が出されたときに、町が一番最初に取り組んだのが、地域担当の職員が各地区に入って行って、地区の図面を広げて、どこに避難路がいるのか避難場所はどこにあるのかを話し合いに行きました」と話します。

およそ200人の町の職員、すべてが、防災業務を兼務します。
そして住民の要望をもとに作られたのが、巨大な津波避難タワーです。

町内には、2013年からの5年間に、津波避難タワー6基を建設。
その一つが、佐賀地区にある日本最大級・高さ25メートルの津波避難タワーです。

18メートルの浸水が想定されているこの地区は、周囲に高い建物がありません。
坂道を上り、山側の避難場所に逃げる必要があるのです。

津波の到達時間は、地震発生から16分。
避難場所までたどり着けない区域の住民のために、タワーが作られました。

収容人数は230人。
人口のおよそ半分が65歳以上であること。そして、車いすの利用も考え、幅の広い、緩やかなスロープもつけました。

黒潮町民は、
「山まで逃げると言ったら、そこまで津波が来たらとても間に合わない。これができてからほっとする感じがある」
「逃げるところがあるというのは安心感がある。あそこまでだったら杖をついてでも行けるから」
と話していました。

およそ6億円の建設費のうち、7割は国、残る3割を高知県の交付金でまかない、町の負担はわずかで済みました。

2013年には、高知県全体で9基だけだった津波タワー。
この11年間で14倍(今年度末)、126基まで増える見通しです。

地元有志で結成した防災グループ「防災かかりがま士の会」の代表・河内香さんは、県外からの見学者に、津波避難タワーの構造や、防災活動などを紹介。

その活動で得た収益をタワーの維持管理や備蓄品の購入に充て、まち全体で防災に取り組みます。

河内さんは、「住民に避難訓練などに参加してもらって、1回ここに上がってくると安心感もあるし、ここまでだったら逃げられるなとか自信も持ったし、いい方向に進んでいる」と話します。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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