がんばることが当たり前になりすぎて、自覚がないままにがんばり過ぎている人がたくさんいます。
“がんばり方”は教えてもらってきていますが、“休み方”は教えてもらっていませんから、「疲れたなぁ」と思ってもどうしたらいいのかわかりません。
今回は公認心理師である筆者が、「そんなにがんばっていないけれど、なんだか疲れるな」と思う方に知ってほしい“習慣”をご紹介。 自分の“がんばり過ぎ”に気づき、心を守るための3つのヒントをお届けします。
まず何をするときも、それが自分にとってどのくらい大変なことなのかを考えてみてください。同じことをやるにしても、感じる負担の大きさは人によってさまざまです。
ペーパードライバーの筆者にとっては、運転してスーパーに行くなんて命がけの行動で、そんなことをしたら丸一日ぐったりしてしまいます。でも日常的に運転される方にしてみたら、歩いてスーパーに行くほうがきっと負担ですよね。
どちらがえらいとかすごいとか、そういうことではないのです。自分にとってどのくらい大変なのかを考えることが大事です。
他の人にとっては簡単でも、あなたにとって難しいことがあるのは、決して悪いことではありません。大変だからといってやらないわけにはいかないこともあるでしょう。
がんばってやってみたら、ちゃんと“大変なこと”をやり遂げた自分を褒めてあげてください。「このくらいのことで褒めるなんて……」と思わずに、きちんと努力した分は認めて褒めてあげることが大事です。
褒めることが難しかったら「大変だったね」と、心の中で大変さを認めてあげるところから試してみてください。
「こう考えると良い」といった内容の本を見かけることも少なくありません。読んでみると「たしかにそう考えられたらいいな」と参考になります。
でもなかなかその通りには思えないし、できないということはありませんか? そうすると、“こう考えるべきなのに、そう考えられない自分”がダメな人間だと思ってしまい、落ち込んでしまいます。
「考え方を変えなくちゃ」と思う前に、自分がどう感じているのかを大切にして受け止めてみましょう。
どんな感情もあなたの中に生まれてきてくれた大切な気持ちです。まずはその気持ちを受け止めて、「そう感じているんだね」と自分に声をかけてみましょう。受け止めてあげないと、いつまでもその感情は消えず、より強くなっていきます。
「ちゃんとわかってくれたな」と心が満足すれば、気持ちが落ち着いて、自然と気持ちが変化していくものです。
自分がどのくらいがんばっているのか、そして、どういう気持ちでいるのかが少しわかってきたら、それはそのまま置いておいて……ちょっと別のことを考えてみましょう。
“やるべきこと”から離れる時間を作るのです。
休むことが苦手な日本人は「休んで」と言われると戸惑いますが、“やるべきこと”から離れる時間を5分持てば、その5分間はちゃんと休めているといえます。
逆にいうと、ベッドやソファに横になっていたとしても、“やるべきこと”を考えている間は休めていません。
きちんと休むためには“別のこと”を考えましょう。本当は何も考えずにボーっとできたらいいのですが、実はそれはとても難しいこと。ボーっとしているつもりが、どんどん“やるべきこと”に関する考えがわいてきて、結局疲れてしまうといった経験はありませんか?
いつも同じことを考えてしまっていると気づいたら、全く関係のないことを考えてみましょう。もし何も思いつかなければ、目の前にあるものを、ちょっとだけ一生懸命に頭の中で実況中継してみてください。
見えているもの、感じている香り、聞こえてくる音……なんでもいいので、頭の中で言葉にして表現してみましょう。ちょっと難しいのがちょうどいいのです。
できるようになってきたら、お気に入りの場所を思い浮かべてみるのもいいですね。
「思っていたよりも自分はがんばっていたのかも」と気づいたでしょうか?
「ちょっと疲れたな」と思ったら少し立ち止まって、「当たり前」と思ってこなしている日々の一つ一つのがんばりを、きちんと評価して労ってみましょう。
今晩寝る前には、「一日がんばったね」と自分に声をかけてあげてみてくださいね。
文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
【画像】emma, node, pearlinheart/ PIXTA(ピクスタ)