2022.10.28

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昭和の表現で、現代を描く。21歳の大学生・かねひさ和哉さんの人気の理由

いま、SNSなどで人気を集めている、“昭和”な動画。

映像も、複数の登場人物の声も、「かねひさ和哉」さんがひとりで作っています。

Youtubeチャンネルは、2022年10月20日時点で、登録者6.5万人以上。公開された動画のひとつに登場する、この人物こそが、かねひささんです。

かねひさ和哉さんYoutubeより

昭和に撮影された写真に見えますが…実は、ことし21歳。関西の大学生です。

自分の「好き」を、文章や映像で表現している、かねひささん。その活動に共感したSitakkeが、「Sitakkeの昭和風CM」の制作を依頼すると、快く引き受けてくれました。

なぜ昭和な動画を作ろうと思ったのか?活動への想いとは?
話を聞くと、なぜかねひささんの活動が多くの人に注目されるのか、その理由が見えてきました。

【この記事の内容】
・過去の表現に惹かれた理由…現代を描くと見えるもの
・まさかの北海道のテレビ局からの依頼に
・好きなことを続けるって、実は大変

過去の表現を…一周まわった新鮮さ

肌寒くなってきた札幌。白黒の世界から飛び出してきたようなかねひささんは、面と向かっても、独特な世界観の魅力を放っていました。

アニメーションの歴史や表現について、文章を書いたり、映像を作ったりして発信しています。

「過去の表現がもともと好きだったので、今あえて現代に蘇らせることで、改めて映像コンテンツの面白さの、一周回った新鮮さを感じてほしくて作っています」

“過去の表現”に興味を持ったきっかけは、「自分でも覚えていない」そう。

「幼稚園の年長あたりの自由帳を見ると『白黒テレビ』『鉄腕アトム』と書かれているので、生粋の古い映像マニアだった可能性は高いです」

物心がついたときには、衝動的に“過去の表現”に惹かれていた、かねひささん。

「フィルムがすごく好きなんです。劣化して色あせたり傷ついたり、作り手が意図していないノイズが映像に入ると、作り手と受け手の間にフィルターが挟まって、より映像としての深みが出てくると思います」

見て楽しむ段階から、作る段階に挑戦すると、思わぬ共感を呼びました。

「最初は『好き』から始まったので、調べてみよう・書いてみようだったんですが、あるとき息抜きで、昔の映像をどこまで自分で再現できるか、やってみたくなったんです。遊びのつもりでしたが、SNSで投稿したら思いのほか反応いただいて、この手法なら自分の『好き』を発信できるかもと思って本格的に始めました」

「見よう見まね・試行錯誤」で身につけた、昭和の表現を蘇らせる手法。

ノイズや色合いだけでなく、声の質感や、ちょっとしたセリフまわしに違いがあったり、語尾にカタカナの小さい「ヨ」がついていたり…細やかな工夫が合わさって、「昔っぽさ」を感じさせます。

「ソーシャルゲームへの課金」など、現代社会の問題を昭和の目線で風刺した動画も特徴です。

かねひささんは、「あえて現代の問題を過去の表現で出すことで、自分たちから距離が遠くなると思うんです。普段主観的に、距離が近く見ているものも、過去の表現で表すことで、客観的な目線で現代の問題を見ることができるんじゃないかと思っています」と話します。

細やかな工夫や、社会風刺も入ったかねひささんの動画は、新鮮さだけでなく、深みも感じられます。

北海道という地域より、そこに住む人々の生活に

Sitakkeを運営するHBCは、かねひささんが住む関西から離れた、北海道のテレビ局。CM制作の依頼は「素直に驚いた」といいます。

「ええっ、テレビ局?!と思いましたね。自己満足というか、『好き』を表現するためにやってたので、正直、自分への評価とか社会への影響をあまり考えていなかったんですが、自分の活動が他人を楽しませたりすることがあるんだと思いました」

北海道好きの父親から旅行の思い出などを聞き、「北海道は厳しい気候だけど、雄大な自然や文化的な背景が面白い」と感じたといいます。

Sitakkeには、「生活の疑問の発見や感動があって、日常のちょっとしたプラスになるサイト」という印象を持ったそう。

SitakkeCMの絵コンテ

そこで、SitakkeのCMを作るにあたっては、「自分が北海道らしさを表現しようとしても説得力がないと思ったので、地域性を出すより、そこに住む人々に注目しました。北海道の人々が送っている、日々の何気ない生活の中に『Sitakke』があることで、少しでも生活が豊かになるというコンセプトを打ち出せたらと」と話します。

完成したCMが、こちら。

登場人物の年代も性別も、一緒にいる人も、過ごすシーンも、さまざまです。

かねひささんは、「北海道にも当然色んな方がいて、それぞれの暮らしを営んでいるはず。色んな方が色んな生活を営んでいて、その色んな生活に色んな『Sitakke』があるという構成にしたいと思って作りました」と話します。

ひょっこり出てくるモグラに、口元が独特な人の描き方。“昭和”な表現も詰まっています。

好きなことを続けるって、実は大変

21歳にして、どんどん社会からの注目を集めている、かねひささん。自分の「好き」を追い求めることへの想いを聞きました。

「好きなことを続けるって、実は大変だと思っているんです。飽きが来るかもしれないし、注目されることで他人の反応まで気にしてしまったり、純粋な『好きなことをしたい』というやる気が失われることってあると思う」

「それでも自分の純粋な気持ちを忘れないようにしたい。自分の場合は古い映像や文化、それが『好き』なんだというこだわりや熱意を、少年のような初期衝動を心の中にずっと残しながら、傲慢かもしれないですけど、社会に自分の『好き』が噛み合って、役立っていくことがあればいいなと思います」

ある才能が社会で芽を出すとき、それが斬新なものであるほど、周囲の厳しい目も、自分の心の中に育つ不安も、大きいのかもしれません。

それでも、自分の「好き」を語るときの真っ直ぐな口調や、このファッションを「自分らしく」着こなし、背筋を伸ばして歩く姿…。

かねひささんの「好き」への純粋な気持ちが、かねひささんの活動を「好き」だと思う人が次第に増えている、理由なのかもしれません。

文:Sitakke編集部IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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