2021.07.01

暮らす

ハーブ研究家かりのさんに教わる、食卓に植物を取り入れるヒント

無理なく身軽に、食卓に草花を

子どもの頃から自然の中で暮らしてきた、かりのさん

「人が料理を食べるとき、味覚の前にまず嗅覚が脳を刺激する。香りが良ければ、もう脳の30%は満足しているとも言われているんですよ」。ハーブ研究家のかりのあさのさんが教えてくれたのは、無理なく気軽に食卓に植物やハーブの力を取り入れる方法。

北海道の都である札幌といえど、その街並みは場所によってさまざまあって、ハーブ研究家のかりのあさのさんが暮らす南区簾舞地区は、周囲360度をぐるりと山に囲まれた自然豊かな場所だった。一見カフェか小さな雑貨店にも見える可愛らしい一軒家で迎えてくれたかりのさんがここに家を建てて30年ほどが経つ。「実家も車で5分ほどの距離にあるんです。子どもの頃から暮らしてきたこの地域がやっぱり好きで」。

小さな頃から、家族で遊びに行く所といえば近所の山や川。フキやウドにキノコなど、季節の山菜を採ってきては塩漬けにするなどして保存食を作り、長い間楽しんでいたかりのさん。とにかく植物が好きだったから、大人になって出合ったハーブの世界にたちまち魅せられてしまったのは、ごく自然な流れだった。

初めは自分自身が楽しむ趣味として

庭にさまざまなハーブを植え、ビネガーやシロップを作ったり、フレッシュな状態で料理に使ったり。ただただ夢中になって栽培するうち、いつしか近所の人たちが庭を見に来るようになった。「花屋にないものや香りが強いものがあって、多分、珍しいお庭だったんだと思います」。さらにその噂は瞬く間に花好きの人たちへ広がったようで、とうとう園芸誌の連載を頼まれたり、オープンガーデンとして雑誌への掲載を依頼されるなど、「仕事として」のハーブの世界に足を踏み入れていくことになったのだった。

ハーブ栽培を始めて約20年。ドライブで訪れた砂川で、車窓から流れてきたハーブの香りに感動したのがきっかけ。

「自分がいつも実践している“ハーブのある暮らし”をお伝えしているのですが、私にとっては日常的なことすぎて、これを本当にお仕事と言っていいのかな?って」。ときには保存食の作り方を。ときにはコンパニオンプランツの考え方や、寄せ植えのコツを。食べるだけでなく、自家栽培のハーブを使ったリースや正月飾りの作り方も。かりのさんが教えてくれるハーブを楽しむためのさまざまな切り口は、どれもかりのさん自身が「いつもの」暮らしに取り入れてきたもの。「自分の暮らしの中で実験を重ねているんです。体調を崩したときは、実験のチャンスって思うくらい(笑)」。

悪寒がしたときの予防措置や、症状が出た後の対症療法。漢方やアーユルヴェーダの考え方を参考にすることもある。どんなときも大切にしているのは、特別すぎず、誰でも手軽に始められること。「まずは『私にもできるかも?』と思ってもらえるかどうかが大事だと思っています。それがその後の『楽しい!』につながると思うんですよね」。

ハーブを使う、ハードルを下げたい

主宰する教室や雑誌の連載で伝えているのは、「使うときに使いやすいように保存する」こと。たとえば瓶に入ったドライハーブは単品のままではなく、数種類をあらかじめブレンドした状態でキッチンに置いておくと便利。「フレッシュハーブを自宅でドライにする場合にも、1種類ごとに束にしてぶら下げておく人が多いけれど、実際使うときにはたいていブレンドするのだから、最初から混ぜて束ねておいてもいいんですよ」。数種類のドライハーブの茎を紐で結んで作るのが定番のブーケガルニも、フレッシュな状態の時に茎自体をくるりと結んで冷凍してしまえば、紐もいらないし、使うときにはそのまま鍋へポイッと入れるだけ。「それから、全部使いきれなくてもあまり気に病まないで。ハーブは生命力が強いものも多いから、特に自家栽培している方は、使いきれなくてあたりまえだと思っていい」。

ハーブを使うときに何となく感じてしまう“手間”や“面倒臭さ”をどうすれば避けて通れるか。「楽しめればいいんですよ」。かりのさんの考え方には、ズボラな自分にもできるかもしれないと思わせてくれる柔軟性がある。

忙しい、馴染みがないと、ハーブを敬遠する言い訳はいくらでも挙げられる。じゃあ、忙しいときにでも便利に使うには? じゃあ、独特の香りを初心者でも楽しめるようにするには? そんなちょっとした技の引き出しを、かりのさんはたくさん持っている。しかもそれらには、実践に基づいた説得力と、背伸びしない親しみやすさがある。かりのさんの口から次々に飛び出すコツを、まずはたった一つ試すこと。最初の扉を開けた先に広がるハーブの世界の可能性に、きっと気づくことができるはず。
※掲載の内容は取材時点(2019年5月)の情報に基づきます。

ハーブ研究家かりのさんに教わる とっておきレシピ

イチゴミントシロップの作り方

■ 材料
密閉できる瓶…好きな大きさ
イチゴ…好きなだけ
生のミント(茎もそのまま使う)
氷砂糖…瓶の1/4 ~ 1/5 程度
酢…材料がひたひたになる程度
※ 氷砂糖の代わりにハチミツでも可。ただし日持ちが短くなるので注意。

夏にぴったりの爽やかなイチゴミントシロップ。季節のフルーツとハーブを組み合わせるのがかりのさん流。材料を順番に瓶の中に詰めていき、1ヵ月くらい常温で馴染ませれば出来上がり。炭酸で割ったり、料理の甘味料として使ったり。作り立ては色味がきれいなので、御裾分けにしても喜ばれること間違いなし。

スロウ日和|北海道の、寄り道ライブラリー

メイドイン北海道のウェブメディア「スロウ日和」。心があったまる、人・店・景色に出会うためのとっておき情報を、本棚(ライブラリー)形式の特集でご紹介。創刊18年の雑誌『northern style スロウ』からWEBへ、私たちが大好きな北海道の豊かさを伝えます。

https://slowbiyori.com/

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